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「バラ戦争」 第8戦

Since : 1999/09/07
Last update : 1999/09/07

問題

メトロポリタン美術館を舞台にした第7戦から1ヶ月余、舞台は転じて、紫のバラ軍が危険な香りでいっぱいのドラマを新たにお送りします。

なお、これは新しく加わった銀のバラ軍を歓迎する意味と、インターン騎士の<Dreamscape>を一人前の騎士にするための紫のバラ軍によるおもてなしの意味も込めての特別上演といたします。

(「歓迎!銀のバラ軍」え?これじゃ歓迎になってない?まあまあ、どうぞ、ゆっくり、出来れば2週間以上に渡ってのんびりと上演を楽しんでください(^^; )

心して見よ、目を見開いて
いま時はうつろい、舞台は巡る

あるいは高貴なる紫か
はたまた邪悪なる赤か
ぬばたまの心の闇もかくやの黒か
枯れつくしたる茶か
色を失いたる白か
血の気も失せし青か
露に濡れ果てたる銀か

ロジャ 「ぼくの仕事があると思ったのになあ」
ティティ「でもあなたの好きそうなものよ」
スーザン「そんな時間にいいとは思わないわ」

それでは、お休みなさい、甘く麗しい夢を

五月初めの日曜日深夜

愛と畏怖の念を込めて  紫のバラ軍一同ならびにインターン騎士より


解き方

前戦に続いて長いヒントですが、3人の台詞が最初の手がかりとなりそうです。

ロジャの仕事と言えば、機関を扱うこと、岸に着いたら最初に船から飛び降りてもやい綱を結ぶこと等がまず思い浮かびます。ロジャの好きそうなものと言えば、チョコレート、その他食べ物や、蒸気船でしょうか。スーザンが「そんな時間にいいとは思わない」というのは、寝る前にそういうお菓子を食べることでしょうか。

この台詞だけから探すべきものを連想するのはまだちょっと難しいです。開戦後、2週間経って出された第3ヒントを見てみましょう。

『ガラスのか○ん』第3部

ジョン「ぼくは、ぜんぜん興味がないなあ」
ロジャ「でもこれはおいしいよ。犬かな? 熊かな? 普通の形なのかな?」
スーザン「人のものに手を出しちゃだめよ」

ジョンが全く興味がないと言えば、蒸気船でしょう。『シロクマ号となぞの鳥』で、ジョンがテロダクティル号について「モーター付きビスケットかんには、何の興味もない」と言っています。第1ヒントのロジャの台詞と合わせると、「ぼくの仕事があると思ったのになあ(でも、モーターがついていないから、なかった)」ということになり、(モーターのない)「ビスケットかん」が残ります。第1ヒントのティティの台詞、第3ヒントのロジャの台詞も、「ビスケット」を指しているようです。ということで、探すべき物は「ビスケットかん」です。

「ビスケットかん」は、サガの中で意外なほどあちこちに出てきます。特定するための手がかりが必要です。第1ヒントにも、その手がかりが埋め込まれているはずです。ヒントをよく読むと、どうしてわざわざ書いてあるのだろうと思える部分が怪しいです。例えば、

これらに、目指す「ビスケットかん」が出てくる巻や章や場面が特定できる情報が入っているのですが、まだちょっと難しいです。開戦後、1週間経って出された第2ヒントも見てみましょう。

<紫のバラ劇場場内アナウンス:大変長らくお待たせいたしました。新設銀のバラ軍ならびにインターン・新兵諸氏歓迎興行第2幕が間もなく開演します。本日は、ただいま劇団赤バラで修行中の本劇団のスター、きTakmurマヤ(注1)が里帰り公演の形でお目見えしますので、隅から隅までずずいーっとよろしくお願いいたします>

(ブザーの音)

舞台左手より、ひとりの少年が登場。客席にどよめきが走る。

客1「おい、あれ、きTakmurマヤじゃないか? そうか、今日が里帰り公演の日だったのか」
客2「嘘つけ、きTakmurマヤって女だろ。あれ、男だぜ」
客1「きTakmurマヤだったら、男を演じるぐらい簡単さ。なんといっても、『千の仮面を持つ』といわれているそうだからな」

舞台中央に立ち、右上からのスポットライトの中に浮び上がった少年(マヤ)。

少年(マヤ)「ああ、どうして気づかなかったんだろう。青い鳥は、本当の幸せは、すぐ近くにいたのに。ぼくは、自分を見失っていた。自分が何者なのか、何が大切なのかに、気づかずにいたんだ」

水を打ったような静寂が劇場を包むなか、少年、舞台上手へと退場。
********************************

紫のバラ軍芸能部広報課より注1)本作品は完全なるフィクションであり、実在の人物との類似は偶然に過ぎません。(ついでにいうと、鳥の色が青いのもまったくの偶然です(^^;)……っていうか、できれば、この色は避けたかった(;_;))

同上 注2)もっとついでにいうと、第1ヒントでの連呼も順不同です。各軍のみなさんは順番をお気になさらないでくださいね。紫がトップに来ているのも、銀が最後に来ているのも、深い意味はありません。

少年(マヤ)の台詞に手がかりがありそうです。また、舞台の「左手」から登場して、「右上」からスポットライトを浴び、「上手」へ退場というのも怪しいです。(「左手」と「上手」という舞台の呼び方が不統一です。)

「自分が何者なのか」の自分を、本当に自分にあてはめると、ランサマイトでしょうか。このゲームでは、バラ戦争のバラ騎士でもあります。この台詞から出てくる手がかりは「バラ」でした。第1ヒントでも、バラ軍の色が並べられていました。また、第3ヒントの『ガラスのか○ん』は、一見『ガラスの仮面』という紫のバラ軍で人気の少女マンガの事を指しているように見せかけながら、実は『ガラスのかびん』を指しています。「バラ」と「かびん」というのが、手がかりとなります。

「左手」「右上」「上手」と並べると、思いつくのは手旗信号です。「左」「右上」「上」に手を上げた形は、それぞれ「B」「E」「D」、つまり「ベッド」です。

「バラ」と「かびん」と「ベッド」が一緒に出てくる場面で、「ビスケットかん」を探しましょう。

誰かを「歓迎」し「おもてなし」するために、「バラ」や「ビスケットかん」を用意する場面です。でも、本当はバラの代わりに危険な猛毒のイヌホオズキを使いたいくらい、歓迎したくないお客様でした。目指す巻には、英語では「Or, Not Welcome at All」(全然歓迎じゃない)という副題が付いています。目指す章のタイトルは、原文では「Transformation Scenes」となっていて、舞台のシーンが転ずることを表しています。


答え

11巻『スカラブ号の夏休み』 第5章「模様がえ」 P67 「ベックフットの客用寝室の大おば用のベッドのそばのビスケットのかんの中」


解説

第7戦に続いて難問でした。出題軍が初めて2週間以上の防衛を果たしました。

第7戦・第8戦は、どちらも出題軍が意図しなかった様々な解釈がヒント文から出てきて、そのために予想以上に攻撃軍が迷走して苦労したという点で、よく似ています。この2つの戦いを通して、ヒント作りの難しさ・面白さについて、学ぶところがたくさんありました。

結局、バラ戦争というのは、攻撃側がヒントからいろいろと推理するだけでなく、出題側も相手が何を考えそうか・考えているかを推理する必要があります。ヒントを作る時に、攻撃側がどのように推理してくるだろうかとあらかじめシミュレーションをすると、それだけフェアなヒントが作れることになります。また、出題側は、攻撃メールを読んで相手がどこまで謎を正しく解いているかを推理して、それに応じて追加ヒントを作ることになります。ところが、このお互いの推理が、必ずしも当たるわけではないので、次にミルクの森さんがうまくまとめたような状況が生じます。

解答側は出題側の意図を何とかたどって解答にいたろうと推理・努力するわけですが、出題側も解答側がどう考え、どう出てくるだろうかと、先手を打とうとします。でも、お互いのネタバレを読んでみると、「これを書いたらいっぺんで正解がわかってしまうのでは」という出題側の心配は、たいていの場合、杞憂だし、「これに間違いない」という解答側の確信は、けっこう出題側もびっくりするようなまったく違うものだったりして、出題側と解答側って問題とヒントを間にはさんで、しばしばお互いに当惑して見詰め合ってしまうのですね。

ここが、バラ戦争の難しさであり面白さでもあります。出題側が予想していなかったような道筋で推理してそれなりに辻褄の合う攻撃を受けると、本当に感激します。


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