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「バラ戦争」 第14戦

Since : 2000/02/13
Last update : 2000/02/15

問題

タイトル: 新春かるた大会中継【バラ戦争第14戦】

バラ騎士のみなさん、こんにちは。

レポーター「今年も恒例の(そこのあなた、高齢ではありませんっ)紫のバラ軍芸能部主催新春かるた大会が開催されましたので、その模様を中継でお送りします。ほら、会場の外にもTakmur将軍が上の句を読みあげる凛々しい声が聞こえてきます」

Takmur「いーまーまーでーにー おしこめらーれた ばーしょよりもー」

一同、真剣なまなざしで畳の上に配置された下の句のカードを見ている。と、一瞬、紫の振袖が胡蝶のように優雅に閃いて……。
Titmouse「はいっ」(パシッ)
レポーター「さすがTitmouse将軍、さっそく1枚! お見事な手並みでした。バラの地模様の紫の着物もお似合いです(うっとり)」

Takmur(Titmouse将軍に笑顔でうなづき、次の歌を読む)「きーしーにーおーりー よろめくあーしーで はいりこむー」
レポーター「これがその入りこんだ中に隠したという問題の歌ですね」
と、またも、静寂を凛と裂いて、「はいっ」という声が響き、紫の袖がひらめいて、畳がパシッとなる。
レポーター「うーん、今年もやはりTitmouse将軍の年か。強い、強い、早くも独走態勢に入りつつあります」

Takmur「わーいーつーけー なんとかやーまは こーえーたーけどー」

紫の垂れ幕の外から見ていた観客から、「こんな私事の歌を入れたのは誰だー」という怒声。
ミルクの森広報課主任、つかつかと声の主に歩み寄り、「いいんですよ」と話しかける。「これが理由で開戦が遅れた(本当か?)のですから、関係あるんです。(「いいわけはよせー」「ひっこめー」との怒声が周囲から上がる。)い、いいわけじゃありません。それでは(早口になりながら)かるた大会、楽しんでくださいね」(そそくさと垂れ幕の陰に消える)

レポーター「場外で騒ぎがあったようですが、その間にこの1枚もTitmouse将軍が取りました。勝負は次の歌にうつっています」

Takmur「あーさーのそーらー かーやぶーきやーねーで かーぜーをーうーけー」
そのとたん、またも「はいっ」と声があがり、紫の袖が……。どよめく、観客。
レポーター「うーん、Titmouse将軍強し。またも、一人勝ちか」

が、そのとき、「異議あり!」という声があがった。声の主は、まだ一枚もとれずにいる参加者である。「いまのはお手つきじゃないですか。上の句と下の句があっていませんよ」

レポーター「という声があがっていますが」(と詠み手であるTakmur将軍と傍らに腕を組んでTitmouse将軍の活躍にエールを送っていたカカオ司令官を見やる。)
カカオ「いや、いいんです。あってますよ」(と、にっこり。)「これでいいんです。何しろ、実はこれこそ巻情報なんです、ふっふっふっ」

レポーター(画面正面にに向き直って)「とのことです。よろしいでしょうか。それでは、まだまだ名残惜しいところではありますが、これでいったん、かるた大会中継を終わります」(続きは第2ヒントで(^^))

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さて、ここで問題です。紫のバラ軍のかるた大会でここまでに登場した歌の上の句は、次の通りです。

「今までに 押し込められた 場所よりも」
「岸におり よろめく足で 入りこむ」
「Y2K なんとか山は 越えたけど」
「朝の空 かやぶき屋根で 風を受け」

この4句につながる下の句と歌の作者は次の通りです(順不同)。

「よいこらあがるぞ 岩の上まで」(詠み人知らず)
「広く平らで 端は四角」(聖像様)
「中から見えた トリコロール」(ジョン)
「決算に向かい 苦労は続く」(カカオ)

我こそはと思うバラ騎士のみなさん、上の句と下の句をつないで短歌を作り、全12巻中のある場面を導き出して、隠し場所を推理してください。歌だけでの推理も可能ですが、中継の中でのやりとりなども参考にしてみてくださいね。それでは、みなさんの楽しい推理メールを楽しみにしておりまーす。

紫のバラ軍広報課主任 ミルクの森


解き方

★ まずは、上の句と下の句の組み合わせを考えてみます。

1) 「今までに 押し込められた 場所よりも」 「広く平らで 端は四角」 (聖像様)
2) 「岸におり よろめく足で 入りこむ」 「中から見えた トリコロール」 (ジョン)
3) 「Y2K なんとか山は 越えたけど」 「決算に向かい 苦労は続く」 (カカオ)
4) 「朝の空 かやぶき屋根で 風を受け」 「よいこらあがるぞ 岩の上まで」 (詠み人知らず)

1)と3)は、まず間違いないでしょう。2)と4)は、逆の組み合わせも考えられますが、「入りこむ」「中から」というのが続きやすいのと、4)の歌は、わざわざ上の句と下の句の組み合わせは不自然なことがヒントに書いてあるのにあてはまるので、上のようになります。

3)は、出題軍のカカオ司令官が土人生活多忙なことを歌っているようなので、取りあえずヒントからははずしておきます。4)が巻を特定する歌、1)と2)が聖像さまの隠し場所を示しているようです。

★ 次に、4)の歌から巻の特定をします。「かやぶき屋根」は、実際にノーフォークでよく見られます。ノーフォークものである5、9巻で探してみましょう。「よいこらあがるぞ」というのは、ある歌の歌詞の一部です。

ダッジョン家の屋根がかやぶき屋根です。5巻第2部の冒頭(P240)に出てきます。朝の空で風を受けているのは、かやぶき屋根の上の「金色のコイ」です。「よいこらあがるぞ」というのは、ツバメの谷へキャンプを引っ越す時に、滝そばの岩をよじのぼって荷物を引き上げるのに歌われます。2巻P213です。

上下の句から浮かび上がった言葉をつなげると、「コイの滝登り」となります。辞書で調べると、これは、

黄河の中流にある竜門の急流を登った鯉は竜となるという故事から人の立身出世することにいう。→登竜門

という意味があります。つまり、金のコイは滝を登ると「金の竜」になったのです。金の竜と言えば、ミスィー・リーの旗印です。10巻P463でも、月照号のマストに「黒地に金の竜をえがいたミス・リーの旗」がひるがえります。つまり、聖像さまが隠されたのは10巻であることが分かりました。辰年である2000年の新春にふさわしい巻です。

★ では、いよいよ聖像さまの隠し場所にせまります。読み手であるジョンが登場する中で、「岸におり」という所から岸に着く場面を全てチェックしてみると、その後に続く「よろめく足」に該当するような場面は見つかりません。ここが、この問題のとても巧妙に出来たトラップでした。「岸におり」というのは、船から降りるとは限りません。陸側から岸にやってきて岸に降りることも考えられます。

P200に、ロバに乗って揺られて岸にやってきて、ようやくロバから降りてよろめく場面があります。そこで、「両端が四角で幅がひろい船」に乗りこみます。次のページからそれが「平底船」であることが分かり、「広く平らで 端は四角」にあてはまります。

その中から見えたトリコロールとは何でしょう。P204で、船の上から停泊中のジャンクが見えます。ここでは「赤と青であざやかにぬってあり」と書いてありますが、その後、P308で、このジャンクが「あざやかな赤、青、白」、まさにトリコロールであることが分かります。

隠し場所が分かってみれば、カカオ司令官の歌も、この場面に何となくあてはまることが分かります。


答え

10巻『女海賊の島』 第10章「ふたたび歩く」 P200 「両端が四角で幅がひろい船の中」


解説

紫のバラ軍からの久々の出題でしたが、準備に時間をかけただけあって、見事な名問題だと、各バラ軍から絶賛されました。そう簡単には解けない手応えのある問題でありながら、取っ掛かりとなるヒントは「かやぶき屋根」、「岸におり」、「トリコロール」など、たくさんあって、気軽に楽しく探せるように作られていました。そのため、こじつけも含めて攻撃も数多くあり、出題軍にとっても楽しめるようになっていました。バラ戦争の歴史に残る、名問題のひとつとなるでしょう。


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