アーサー・ランサムの世界 by COOT

Ideal 18
1年目(1998年)の航海日誌

Since : 1998/07/29
Last update : 2002/01/12

このページは、アメリカ生活を初めてからの我が家のヨットの航海日誌です。20年以上前に2〜3ヶ月の間、クルーザーに毎週末乗せてもらっていたのと、その後何度かディンギーやクルーザーに乗せてもらった以外は、特にヨット教室に通ったこともなく、私はヨットに関しては初心者です。でも、せっかくのアメリカ生活、こちらは日本に比べてもヨットを楽しみやすいに違いないと、この機会に練習することにしました。

まずはヨット教室に、と思っていたのですが、会社のヨットマンにここがいいから、と薦められたヨットクラブに行くと、全くの初心者は別のヨット教室に最初は通ってもらうとのこと。ある程度の基礎が出来ていれば、ここのメンバーになって、それからは基本的にいつでも乗り放題ということでした。教室だと1時間に数千円(円安になって大変です)もするけど、メンバーになれば10月までの間数万円でヨット乗り放題、だから早くメンバーになるにこしたことはありません。そこで一夜漬けのヨット入門の本と20年以上前に(高校生のとき)しばらくクルーザーに乗せてもらっていたさびついた経験を頼りに運を天にまかせてテストを受けたら、まあいいでしょうとのことでメンバーになれたのでした。

Norwalk Islands(ニューヨーク版の『秘密群島』)周辺の海図

クリックすると拡大します。下の航海日誌に出てくる地名(ほんとうの名前と土人の名前)や、いろいろな事件が起きた場所を確かめるのにお使いください。

7月25日(土):ヨットを始める

「Ideal 18」という型のヨットに乗ってきました。う〜ん、実にいろいろとあって、書ききれません。まだ興奮状態です。

まずヨットクラブの場所と名前ですが、これがランサムっぽくて気に入りました。ダリエン(Darien)という街で高速道路を降りて、ロング島と本土との間の海(Long Island Sound)に突き出た半島の突先にNorwalk Yacht Clubがあります。Norwalkというのはちょっと綴りを変えるとノーフォークですね。(ちょっと苦しいか)

どこにIdeal 18があるのだろうと陸の上や桟橋につながれたヨットを眺め渡してもそれらしいのがありません。なんと鬼号のように目の前のブイにつながれていました。そこまで20〜30mくらいですが渡し舟で渡してもらいます。

Norwalk Yacht Club のクラブハウス

広いデッキにテーブル・椅子が並び、自由に使えるバーベキュー・グリルもあります。建物の中は暖炉にソファ、海や帆船に関した本が並ぶ本棚。私たちは、正確にいうとクラブの会員ではなくて、あくまでもIdeal-18にシーズン中乗れるプログラムのメンバーなので、ヨットに乗る前後1時間程度しか、このクラブ・ハウスを使ってはいけないことになっています。
クラブハウスから眺めたハーバー

海に出て行く方を眺めています。写真をクリックして拡大すると、繋留されているIdeal-18が見れます。たいてい左から右へ、つまり海から陸に向かって風が吹いているので、出航は風上に間切りながら出ていくことになります。

帆走のテスト

7/25 11:30-13:00、1号艇、天気:晴、風向:南、風力:弱

もともとこの日は家族4人で2時間のレッスンを受ける予定で、そういうことを何度かやってちょっとは自信がついたらいずれテストを受けてメンバーになろうかという気持ちだったのですが、天気は晴れ、風は陸に向かって吹く南風のそよ風、ちょっと気が大きくなって、取りあえずテストを受けるつもりで始めて、私がどうしようもなかったらその時点で「検定中止」にして後はレッスンに切り替えてもらう、ということにしました。

「じゃあ、何にも手伝わないから、分からないことがあったら聞いて」といきなり放り出されます。幸いこの「Ideal 18」は「簡単」と「安全」を追求して設計された型らしくて、本当に今までに見たどのヨットよりも準備も後片付けも簡単です。まず運んで水に降ろす必要がない、マストも立てっぱなし、メインもジブもセールは付けっぱなしでたたんでカバーがしてあるだけです。センターボードも無いし、その代わりに鉛の重たいキールがあるので、安定性抜群(まっ逆さまにたとえなっても船が勝手に起き上がるそうです)。セールのカバーをはずして、メインハリヤード(上げ綱)をシャックルでセールの一番上に付けて、「2・6・ヒーブ」と心の中で唱えながら(練習帆船「海星」でハリヤードを上げる時の掛け声です)上げました。ジブがまた超ハイテク超簡単、鬼号のようにハリヤードはなくてフォアステイに巻き付けてあるので、ジブシートを引っ張るだけで開きます。しかも勝手に自分でタック(転回)してくれます。「ジブはもやい綱を解いてから上げるように」と言われ、またたたみました。これもロープを一つ引っ張るだけでたためます。

もやい綱を解くのはAB船員の娘の仕事にしました。家を出る前にもやい結びを練習させておいたので、「はずしたロープの先にもやい結びを作るように」と言われてちゃんと出来てほめられました。その輪に帰ってきた時の目印として旗のついたブイを付けて海に放り込みます。

さて出航、この日に備えて一夜漬けでヨットの入門書の入出航の章を読んでおいたのですが、ブイからの出航では、ジブの裏帆とラダー(舵)を使って風に押されてバックしながら船首を進みたい方向に向けて、メインシートを引き込んでジブを反対舷に戻して風上に向かうことになっています。でもジブはまだ上げてないので、バックする方向が定まらずブームを押してメインを裏帆にしたら自分が行きたい方向と逆の方に向きが変わって行ってしまいました。この辺りは理屈では分からないまま、メインを逆の方に押し出して何とか正しい方を向いてから子供達にジブを上げさせてメインシートを引き込んで風上に向かいはじめました。

最初は左側は陸、右側はたくさんのクルーザーがブイに繋留されているエリア、その間の狭い水路を何度もタッキング(間切る)しながら出て行きました。タックの度に座る位置を右舷から左舷、左舷から右舷と変えるのですが、移動する時にティラーとメインシートが邪魔になって非常にぎこちないので、「ティラーはまたぐより持ち上げてくぐった方がいい」と言われ、その通りにしたらますますぎこちなくなってしまいました。そのうちにクルーザーの間を通っても別に構わなそうだったので、もっと大きくタックしながら海に出て行きます。

この辺りは有数のプレジャーボートのメッカで、たくさんのマーゴレッタ号が行き交うし、島もたくさんあって、いくつか注意しなくてはならないカマス岩もあります。出航前に海図(チャート)でそういう場所の説明があったのですが、まだチャートの上と実物の距離感がないのでよく分かりません。だからとにかく風上に向かって出航したというだけの理由で風上に向かいました。広いところに出て、「では今度はジャイビングを見てみたい」と言われ風下に向かいます。とにかく風が弱かったのでジャイビングものんびりした感じで、今のはナチュラル・ジャイブだったのか意識的にやったのか、自分でもあいまいな感じなまま何度かジャイブを繰り返していると、やっぱり先生にはバレていて、「まだジャイブするつもりじゃないのにメインセールが移動し始めたら、ティラーをちゃんと押してジャイブを止めるように」と言われました。「Tiller toward trouble」と英語では言うのだと教えてもらいました。つまり、メインがジャイブしたがっているというトラブルがあれば、メインの方にティラー(舵棒)を押す、右舷前方にカマス岩があれば右舷にティラーを動かせばヨットは左に向かいます。なるほど。とっさの時にまだ身体が覚えていなくて理屈が間に合わない時にはいい格言です。それからジャイブする時はわきにティラーをはさめば両手でメインシートがたぐれる、ということも教わりました。

それでは、ハーバーに戻りましょうということで、今度はほとんど真後ろから風を受けていくので常にジャイブを心配しながら戻りました。突然、いろいろと質問が飛んできました。これも一夜漬けの効果がありました。

これ間違っている所もあるかもしれないのでそのまま覚えたりしないでください。

ハーバーに近づくと、「ブイに繋留する時の計画をもうちゃんと考えてありますか?」『行き過ぎてから方向を変えて風下側からブイに近づきます。』と答えて、あっそうだ、と子供達にブイをつかまえる仕事とジブをたたむ仕事の手順を説明しておきました。でも頭の中は、最後にジャイブする必要があるかどうか、ジャイブしないで方向を変えるにはどちらからアプローチすべきか、ということを理屈で考えようとしていてそれが間に合わない状況にあったのですが、先生が「最後にジャイブしないといけないですね」と先に言ってくれたので『そのつもりです』と厚顔にも答えて、無事にブイにたどり着いたのでした。

やれやれ、一応テストは合格し、これで晴れてメンバーとなりました。信じられないくらい安いのです。10月まで基本的にはいつでもヨット乗り放題で$572です。乗るたびに払う費用は無し。本当は5月から10月までの1シーズンで$880なのですが、もう7月終わりなので割引してもらいました。

Ideal-18のマストを見上げたところ

青空をバックに優雅に弧を描く白いセールが映えます。お気に入りの写真です。マストの一番上には風見がついています。本当は自分達の旗を上げたい所ですが、残念ながら旗用の上げ綱はありません。

島への航海

7/25 15:30-19:00、6号艇、天気:晴、風向:南、風力:微風後凪

さっそく、午後は今度は家族4人だけで借りて航海に出かけることにしました。

天気の良い土曜の午後は一番人気のある時間帯ということで、6隻あるIdeal 18は既に予約で一杯です。(平日は予約無しで、土日も1〜2日前に予約すればたいてい乗れるそうです)でも3時過ぎに戻ってくる艇があるということで、それを借りることにしました。それまでに近くのマリン・ショップへ出かけて、さっそくこの付近の海図を買いました。(部屋の壁にでかでかと張っていつでも眺められるようにしました。)子供達もこういう店は初めてなので、「あっ、シャックルがある」などとランサム・グッズを見つけては歓声を上げています。

戻って来た人が降りるやいなや、渡し船でIdeal 18に乗り込みました。今度はどこかで泳げるように水泳の道具やカメラと飲み物も持ち込みました。レーシング・タイプのヨットと違ってIdeal 18はまず濡れることがない構造になっています。大人4人が悠々座れるくらいのベンチ(背もたれ部分あり)があるし、船首にはいろいろと物を持ち込んでも収納出来るスペースがあります。その点、最近のディンギーよりはツバメ号らしい感じがします。

艇に備え付けの海図を出して、近くの島へ行ってみることにしました。昔の灯台がある島で岸のそばまで水深は十分そうです。ほとんど真っ直ぐ風上にあります。出発してすぐに唖然、この艇はマスト・トップの風見が壊れていて風向が分かりません。私はまだ身体で風向きを感じることは出来ません。そのせいか、風は吹いているのに、さっきに比べていやに艇がのろのろしています。風上に切り上がり過ぎているのか、セールの角度が悪いのか、風が弱いのか、さっぱり分かりません。子供達に「もっと速くならないの?」と言われてもどうしたらいいのか分かりません。

繋留してあるクルーザーの間をぬって大きく間切りながらハーバーを出て、広いところで子供達に舵を渡しました。AB船員とボーイが交代で舵を取りながら島へ近づき、アンカーの用意をして、ちゃんとアンカーロープの端を船首にしっかり止めて鬼号のようにならないように確かめました。

さてこの辺りかなという所でジブをたたみ艇を風上に向けてアンカーを降ろしましたが、まだ艇は陸(風上)に向かって惰性でどんどん進んでいます。風上に向けて艇が止まって後退しだした頃にアンカーを本当は落としたかったのですが、アンカーでブレーキをかけたみたいになってしまいました。メインシートを自由にしてメインはバタバタ風にはためかせているのですが、これに風をはらんで前に進んでしまうのかとも思って、メインも降ろすことにしました。

そうしているとモーターボートで突然さっきの先生が現れました。こんな所にアンカーするのは危険だとか、手順を見ていて何か間違っていて注意されるのか、と思いながら「ここじゃまずいですか?」と聞くと「大丈夫と思うけどちょっと海図を見せて」ということです。「水深は十分あるようです」と言って渡すと、米印のようなのを指差して「このあたりに3つ岩がある。あれがそのうちの一つだ」と指差しています。おお、あの印は岩だったのかと今さらながら思い、おお、あんな所に岩がある、と今さらながら気づき、これは夜間航海のジョンと同じく限りなくノロマに近かったなと、内心真っ赤になりながら反省しました。「残りの2つの岩を探してみる」と言って先生は辺りをモーターボートで少し偵察しましたがそれは見付からず、結果的には大丈夫な場所にアンカーしたようです。「島に上陸するなら乗せてあげるぞ」との親切なお申し出でに、50mくらいなので泳げない距離ではないのですが、せっかくなので水泳の道具とカメラを持って「じゃあお願いします」とモーターボートで島の桟橋に渡してもらいました。45分後にまた迎えに来てもらうように頼んで島流しにされました。

そのとたんに「上陸大人$4」の看板に気づきました。濡れるといけないと思って財布は車に置いてきたので一文無しです。まあいいやと上陸し灯台の周りを散歩し、ビーチで娘と私だけ海に入って泳ぎました。水はあまりきれいではなくて海の中はほとんど見えません。そこそこにして陸にあがると、おばさんがやってきて「灯台の中を案内しましょうか?」とのことです。「実はお金をおいてきてしまって」と打ち明けると、「そんなの後で送ってくれればいいから」ということで、古い灯台の中をそのおかあさんと3歳の男の子(一生懸命ツァーガイドするのでかわいかった)の案内で見せてもらいました。一番上からはマンハッタンの摩天楼も望めるそうですが、霞んでいてよく分かりませんでした。この島(Sheffield Isle.)に住むのはこの一家族のみで、毎日船で通勤・通学しているそうです。スゴイ!と皆で感心すること仕切り。

さてそろそろ戻らないと夕方でどんどん風が弱くなっているようです。早く先生来ないかなと首を長くして待ちます。カメラとか持ってきてしまったので、近くだけど泳いでヨットに戻るわけにはいきません。ようやくやってきたと思ったらガールフレンドとそのお母さんを連れてきてました。これから島を案内するとのことです。

ヨットに戻り、セールを上げて、アンカーを上げて、いざ出発。帰りは追い風と思いきや、どんどん風が弱まってきて出発して2〜3分後にはセールはバタリバタリと音をたてて風が止んでしまいました。島はまだすぐそこです。ううむ。仕方がない。止まっているよりはとロジャのようにすぐにパドルを出して漕ぎはじめました。18フィートの大きなキールボートを左舷の舷側から1本のパドルで漕ぐので歩くより早くは進めません。その後風は全然吹かず、「あれっ、あのヨットは結構進んでるな」と思うのは全てエンジンで動いています。借りるときに3時から6時までと言われていたので、6時以降はもう借りる人はいないことは分かっていましたが、たぶん6時頃までにはハーバーに戻っていないといけないのかもしれません。でももう6時を過ぎています。とにかく漕ぐしかないと漕ぎ続け、島を少しずつ離れ、モーターボートが行き交う水路を横切り、別の島を過ぎ、湾の入口にかかり、クルーザーの間を抜けて、ようやてハーバーにたどり着きました。結局島からハーバーまで全て漕いだことになります。家に帰って海図で調べたらちょうど1海里(2km弱)の距離でした。夕方になると風が落 ちる、これくらいの距離なら何とかなる、ということを身をもって覚えました。

とにかくこれでいつでもヨットに乗れるようになったので、せっせと練習したいと思います。いずれ毎週木曜の夜にある初心者向きレース(Ideal 18だけで競います。初心者向けはスピンネーカー不使用)というのに参加してビリにならないことがひとつの目標です。と言っても私はレーサーではなくて、あくまでもツバメ・アマゾン的にヨットを楽しみたいと思っているのですが、なんかレースも面白いかもという気もしています。

灯台の島の灯台

今はもう明かりは点かず、形だけの灯台になっています。この島に住んでここを守っているお母さんは、この灯台にまた灯を点すのが夢なのだと語ってくれました。
灯台の上からの眺め

西南西のマンハッタンの方向を眺めているところです。一番右側のセールをたたんだヨットが、我らがIdeal-18です。

7月29日(水):失敗から学ぶヨット

7/29 16:45-18:00、2号艇、天気:曇、風向:南後北より、風力:最初はかなりあったけど一定せずだんだん落ちてきた

今日も夕方1時間ちょっとだけ乗ってきました。今日は風がかなりあったので、すごく緊張しました。

風があるのでジャイブするのに、ちゃんとメインシートを手繰り込んでから繰り出そうとしたのですが、ヨットの入門書に書いてある「当て舵」を知識としては頭にあってもいざとなると出来ていなくて、グワーンとヒールしてあせりました。一度こういう経験をすると、「当て舵」の必要性が身に染みます。それから何度かジャイブの練習をしましたが、ちゃんと「当て舵」を意識してしました。こう書くと、まるでもうジャイブを物にしたみたいに聞こえるかもしれませんが、実際はどの程度のタイミング・強さ・時間で「当て舵」をするのがいいのかとか、メインシートを手繰り込み始めるタイミングとか、まだ全然分からなくて、ジャイブもどきの一種をしているに過ぎないような気がします。

ジャイブよりは簡単なタッキングも、一度何がどうまずかったのか今でも分からないのですが、新しい風下側にグワーンと座席が水没するくらいヒールして、めっちゃあせりました。しかもその時はメインシートが足にからまってしまうし。タックやジャイブする前にメインシートにからまないように確認しないといけないですね。(その後も出来てませんでしたけど)

帰航中に、突然そんなわけないという時にナチュラルジャイブしてしまいました。何が起こったのだろうと見渡すと、なんと一瞬の間に風向が変わってしまったみたいです。行きも帰りも風上に間切ることになりました。ところが、風向が一定せずに、ハーバーに近づくにつれてどんどんハーバーから遠くなる方向に押しやられるように風向が回っていきます。仕方なくタックすると、また同じ事の繰り返し。風も強くなったり弱くなったり。「風が回る」という状況を体験しました。あれがもう少しひどかったらハーバーに帰り着けるのだろうかと心配になっちゃいますね。

最後は幸い風がそよ風程度に落ちて、ハーバーに近づきました。土曜日の経験から、この艇は大きいし重たいキールがついているしで惰性がすごく強いということが少し分かってきたので、随分手前から真っ直ぐ風上に向けてセールをバタバタとシバーさせながらブイに近づきました。前もってジブはたたんでしまおうとしたのですが、なぜがジブが巻き上がりません。ハイテクの欠点ですね。こうなるともうどうしようもありません。ジブもメインも上げたままブイを掴まえたのですが、まだ行き足があって艇は進もうとするので、しっかりブイのロープを引っ張って船首につなぐと、真っ直ぐ風上に向いてた艇が回転してまたセールに風をはらんでしまい、あらぬ方向に進むとまたロープに引っ張られて方向が変わり、またセールが風をはらみ、とみっともなくグルグル回っていました。仕方ないので、先にメインをあわてて降ろして、グチャグチャにたたんでしまい、ジブの故障した巻き上げ装置と格闘して、結局は手でグルグルとジブをフォアステーに巻いて、ようやくセールも降ろせたのでした。この時に出航時のような強さの風が吹いていたらかなりやばい状況だったと思います。風下からブイに近 づいてちょうどブイの所で速度がゼロになるように、と本には書いてありますが、実際はまだそんな神業が出来るわけもなく、最後にブレーキをかけるのに例えばブームを手で押し出してメインセールを裏帆にするみたいなことをやったりしていいのでしょうか?今日はそこまで頭が回りませんでしたが、後で考えるとそうすれば良かったのかなと思ったのですが、本の上のお手本は最後に速度ゼロになるのでそれに至る道がよく分かりません。

今日は反省することしきり。こうやって一つ一つ少しずつ覚えていくのも、何もかも自己流なので、いろいろとリスクもあるし、次はレースにもなんて色気を出していましたが、まだまだ基本的なことをじっくりと練習しないとと思ったのでした。

ティラーを握るボーイとAB船員

まだこの日は、「舵を押して!」「違う違う、押す!」「ほら、押すってのはこっち!」みたいな号令がよく飛んでいました。

8月1日(土):座礁

8/1 12:30-15:00、1号艇、天気:晴、風向:南、風力:強くなったり凪いだり

早くも大ノロマをやらかしてしまい、ちょっと意気消沈気味のCOOTです。

出航後、いつも南の方に向かってばかりなので、今度は陸沿いに西の方へまず向かいました。その後、どこかでアンカーを降ろして釣りでもしようと、先週の土曜日にアンカーを降ろした場所(灯台の島)へ向かいました。

突然、ガクンとキールが底を擦る音とショックがありました。その後ザザー、ガクン、ザザーとなって船が止まりました。『座礁』してしまいました。悪夢のようです。「どうしてこんな所で?ここは安全なはずなのに!海図にも載っていない浅瀬だろうか?」と最初は思いました。今日初めてちゃんと持ってきたコンパスで島の灯台の方向を調べると真東です。海図で灯台の真西の海域を見るとそこには1とか2とかの数字が並んでいます。このヨットのキールは3フィート3インチ(約1m)の深さがあるのに、この辺りの干潮時の水深はたったの1〜2フィート。最初の日に3個所注意すべき危険地帯と説明があった中の一つである、「GREENS LEDGE」に入り込んでいたのでした。

幸い出航時刻と干潮時刻とが同じだったので、今は潮が上がりつつあるはず。最悪の場合でも、そのまま待っていればまた浮かぶはずだ、と思い、少し落ち着くことが出来ました。(逆だったらと思うと今でもゾッとします。)

ヨットを片側にヒールさせて離れようとしたり、パドルで底を突っついて離れようとしたり、ヒールさせたままパドルで漕いで離れようとしたりしましたが、グルグル向きが変わるだけで離れません。どうももう一隻近くに止まったクルーザーも座礁しているみたいです。セールに風を受けてどんどん浅い方に追いやられると困ると思って、セールを2枚ともたたみました。

そもそもどっち向きに離れなくてはいけないのだろう、離れてもどんどん浅い方に向かっては大変です。もう一度海図を見て、「北」に向かうべきことを確認しました。息子に常に北を手で指差してもらいながら、またヒールさせたり漕いだりしましたが、近くに立っている海底に突き刺してあるらしい棒の位置を見ると全く動いていません。

海に入ってヨットを押してみることにしました。念のため、メインシートの端っこを身体にもやい結びで結んで、服と靴のまま海に入りました。お腹と胸の間くらいの深さです。海底は砂と石と所々小さな岩が混ざった状態です。これだけの水深があるとなかなか力を入れて引っ張れないですが、またヒールさせながら引くとすぐにだんだん深くなって離れることができました。

風でまた浅瀬に戻されるのは困るので、しばらくパドルで漕いで北に向かってから、メインセールを上げて、ようやくまた帆走に戻りました。

するとこないだの先生がモーターボートでやってきました。無線で誰か通報したのか、陸から常に見張っているのか、どうして分かったのか分かりませんが、これだけサポートがしっかりしている事に驚き、感謝し、感心しました。

「座礁していたのはお前たちか?」
『そうです』
「何が起きたのだ?」
『ザザーッと乗り上げてしまいました。ガクンと急に止まりはしませんでした。海に入って押して離れました。』
「水が入ってきてないか?」
『今調べます。』船底にあるネジをはずして蓋をあけて中を見ましたが、水はありませんでした。『水は入ってません。』
「たぶん、大丈夫だろう。ハーバーに戻ったらもう一度一緒に海図を見よう。」

と言って去って行きました。(この会話はエッセンスだけ抽出してあるので、このとおりに滑らかな会話が行われたわけではないです。)

もう一隻の座礁したクルーザーは、自力では離れられず、とうとうコーストガードの船が来て、ロープで引っ張って離れていました。そういう土人沙汰になる前に自力で離れられて本当に良かったと思いました。

もうすっかり弱気になっていたので、アンカーを降ろすのも止めて、確実に深い所を行ったり来たりして、モーターボートが来てもポートタックのヨットが来ても、こちらからあらかじめ避けたりして、予定よりも1時間も前にハーバーに戻りました。(ブイをつかまえるのに、今度はピッタリ速度をゼロにすることに挑戦したら、届かなくてやり直しました。)

さて、海難審判です。先生にいろいろと質問され、どこにいたか、どうしてそこに入ることになったのか、どのように座礁したか、その後どのようにして離れたか、一通り説明しました。幸い、取った行動は基本的に間違いはなかったようでした。いくつか先生の言葉のエッセンスを書くと「ヒールさせることが大切だ。真下から衝撃を受けると船底が痛むが、ヒールさせていれば、下からの力がヨットの傾きで吸収されるので船底が痛まない」「基本的には海には入るべきではない。ヨットが離れて置いてきぼりにされてしまうと大変だから。」「錨を使う方法もあるが、これは高度なわざだ。」

その後、いくつか素晴らしい前向きのことばをいただきました。「明日も予約しているようだが、もう恐くて乗りたくないか?」『いえ、もっと注意しますが、明日も乗ります。』「よし、それならいい。座礁するのはお前が初めてではない。今シーズン3人目だ。皆、同じ所だ。それにこの座礁がお前にとっても最後ではないだろう。フロリダに海岸沿いに行く時なんか、一日に5回くらい座礁しながら行く所がある。そこは下が泥や砂だから大丈夫だけど。」

ハーバーのある半島の一番突先に行って、しばらく風に吹かれて海を眺めながら気持ちを落ち着けました。カマス岩の後のジョンのもやもやした気持ちのきっと十分の一くらいの気持ちを味わいました。ジョンのスゴイ所は、カマス岩の後、注意深くはなったけど弱気にはならず、レースでベックフットの半島の先の浅瀬をヒールしながら越えたことです。

後で反省して自分が一番ノロマだったのは、最初に海底を擦ったショックの後、そのままのコースでいくら船底がガリガリ言っても進み続けていたことです。あまりにも意外な事だったので、海の真ん中にそこだけポコンと飛び出している浅瀬を擦ったように錯覚していました。どの本を読んでも、乗り上げたときに最初にすることは180度向きを変えてまた深い方に戻ることだと書いてありました。当たり前のことですが、いざとなると何も知識・経験が無いと、それも出来なかったわけです。セールはそうやって向きを変えて浅瀬から離れられるなら降ろすべきではないし、逆にセールのおかげでどんどん浅い方に向かってしまうなら降ろすべきだと書いてあるのも、当たり前のことですが、実際に経験した後だとよ〜く分かるという気がします。

8月2日(日):ブイ巡り

8/2 16:15-18:00、4号艇、天気:晴、風向:南、風力:ちょうどいい強さ

土曜に続き日曜にも、めげずにまたIdeal-18に乗ってきました。

日曜の午後は上級者のレースが行われるので、それが戻ってくる4時頃まで待ちました。双眼鏡で遠くの海でレースをやっている様子を眺めていると、スピンネーカー(風下に向かう時にジブの代わりに使うフワッとしたパラシュートのようなセール)を使ったりして可憐なものです。ハーバーに戻って来てブイを掴まえるのもあざやかです。いつかはああなりたいです。

出航後、今日は海図を見てあらかじめ決めておいたコースに従って、ブイ巡りをしました。また知らないうちに危険地帯に入り込んだりしないために、付近のブイを全てそばまで行って目で見て位置を確認するのです。そうするうちに海図上と実際の位置との感覚がちょっとは身についてくれることを期待してのことです。

今日は風もちょうど良く一定の方向から吹いていて、何事も無く無事に予定通りにブイ巡りを終えました。(考えてみると今日は一度もジャイブしなかった。)最後にハーバーに戻ってきた時に繋留するブイまでまた届かず掴まえそこなったのがくやしいですが、それ以外は満足行く航海でした。息子もちょっと昨日は弱気になっていたので、今日はまだ舵は握りたがらなかったですが(実は昨日、息子に舵を代わったとたんに座礁したのでした。もちろん息子に何も責任はないのですが)、今までで一番楽しかったと言っていました。良かった良かった。

家に帰ってから壁に張ってある海図で今日見たブイと通ったコースを説明すると、急に興味を持って、海図を眺めてはここは岩だらけでスゴイとか、ここは浅いから入っちゃいけないとか、言っていました。昨日の座礁の後、どこを走っていてもまた急にガクン、ザザーッと座礁するのではないかと息子は神経質になっていたので、海図の上で数字が4(水深4フィート)以上なら大丈夫なのだということ、ブイを目印にすれば浅い危ない海域が分かることを納得したのは良かったみたいです。私もまだ知らない海図の記号がたくさんあるので、ちょっと勉強してみたいです。眺めていると本当に面白いです。

また元気になったボーイ

ハリヤードやシート類は、このように船首のところにまとめてクリート(留める)出来る場所が作ってあります。その下の船倉は大きくてかなりいろんな物が入れられます。救命胴衣4人分、パドル1本、アンカーとアンカーロップ、予備のもやい綱、霧笛代わりのラッパ、緊急用信号、レースに使う旗、海図、バケツ、スポンジ等が常備されています。

8月8日(土):水路を間切る

8/8 12:30-15:30、5号艇、天気:晴、風向:東北東、風力:ちょうどいい強さ

出発前に灯台の島を一周するためのコースを先生に詳しく聞きました。満潮に近い時でないと通れず、やっぱりかなり難しそうですが、もう少し練習すればなんとかなりそうな気はします。Norwalkの町に出入りする船のための水路をかなりの区間使わなくてはならなくて、その一部はどちら側にはずれても座礁の危険がある場所があります。そこが難しそう。まるでブレイドン湖です。今日は満潮を過ぎてどんどん潮が引く時間でもあるのでまずは偵察だけすることにしました。

最初に南西に向かって進み、前々から遠くに見えていて気になっていた海に浮かぶ大きな灯台を一周しました。さて、そこから真東に向かい島の反対側(南側)に行こうかと思ったら、息子が「トイレ」。仕方なく、またハーバーに戻りました。ひょっとしたら今日、島の一周も出来そうだったらしてみようかと思っていた気持ちも、もう時間切れになりそうだしすっかり消えました。

今度はNorwalkの町への水路を出来るだけ行って、島と島の間を抜ける水路に入るあたりまで偵察することにしました。最初は水路の両側も広い海で浅瀬も無く、ほとんどどこを走ってもいいので、大きく間切りながら進みました。水路の右に赤い三角のブイ、左にドラム缶型の緑のブイがあります。ブイからブイへ辿りながら進みます。水路を使うモーターボートの引波に大きく揺られます。風向きが向かい風なので、水路に沿ってまっすぐには行けず、スターボード・タックが水路に沿って長くポート・タックが水路を横切るように短く、という間切りで進みます。ほとんどの場合、こちらに優先権があるのですが、それでもモーターボートや大きなクルーザーが近づくたびに緊張します。

だんだんと狭い区間にやって来ました。水路のすぐ右には島、左には下を岩で固めた上に立つ灯台。出発前に、島のすぐ際まで水路は深いと先生に聞いていたのですが、それを知らなければ出来るだけ島から離れたいと思うような所です。前方に見える次とその次の同じ色のブイが重なる線を越えるとそれは水路をはずれたことになりますから、その手前で転回し、水路の反対側でまた別の色のブイが重なりそうになったら転回します。周りの船の様子をよく見ていないと、いざという時に転回したいけどそうすると衝突してしまうという状態になるのが恐いです。幸い、そういうタイミングで船が近づくことはありませんでした。

島を一周する時に使う島と島の間の水路と、それに向かう時の目印になるブイを確認した時点で180度方向を変えて、水路を戻りました。今度は水路に沿って真っ直ぐ進めます。風は斜め後ろからでジャイブの危険もありません。これは楽チン。水路の右の緑のブイを次から次へ辿りながら戻りました。

水路は思ったよりも大変ではありませんでした。これで島一周への挑戦がずっと近づいた気がします。今日は、最後にブイをつかまえるのもちょうど速度ゼロになるタイミングでつかまえることができて、大満足です。

先生に「今日は入口のブイまで行ってきた」と話すと、あの辺りに素敵な場所がある、とのことで、アンカーを降ろして泳いで島に上がって潮干狩りも出来るという場所を教えてもらいました。明日はそこに挑戦してみたくなりました。先生は、その先の浅瀬を抜ける通り道が細いS字型になっていて海図の上ではとてもじゃないけど通れそうにない所も行ったそうです。秋になって寒くなれば、川を上ってここのレストランに留めてスープを飲むのがいいとか、この港の桟橋に付ければホットドッグが食べられるとか、岩だらけの海面だけど何かと何かを目印にして一直線に進めば(ヤマネコ島の導灯を思いました)ここにも入れる、とかたくさん夢を語ってくれました。少しずつ自分の実力に合わせて何か挑戦できるものに事欠かないこの辺りの海はとっても素晴らしいと思います。

8月9日(日):無人島に上陸

8/9 12:00-14:30、3号艇、天気:晴、風向:東、風力:ちょっと弱め

今日もまた素晴らしい天気で、風向きは昨日教えてもらったアンカーするのにいい場所に行くのに最適の東風です。

出航後、いつも最初に目指すC1という緑のブイへ向かいます。ポートサイド(左舷側)を平行して走っている別のヨットが邪魔で、C1の所でタックして左に行きたいのに、隣のヨットにぶつからずに船尾を横切れるかどうか自信がありません。まだまだヨットレースなんて出れません。仕方ないので右に大きく回ってジャイブして270度ターンしてから水路の入口のR2(赤)−C3(緑)ブイを目指しました。

ここから水路は北北東方向に真っ直ぐのびています。昨日と少し風向きが違うようで、今日は風上へ限度いっぱいの方向でちょうど水路の向きとあっているのでギリギリ間切らずにすみます。水路の右側に沿って赤のブイをR2−R4−R8−R10−R12とたどって進みました。昨日一度通っているだけでずっと気分的には楽です。今日は息子にも何度か舵を代わってもらいました。R12から右へ90度曲がって南東に進むのですが、風向きを考えるとそれだと風上に向かいすぎて真っ直ぐ進めなさそうなので、もうしばらく水路を進み、R14のそばでタックしました。南南東の緑のC11の左側を目指します。C11の右側には浅瀬があります。C11を過ぎたら少し針路を右寄りにして真南に進みます。途中の左手に浅瀬があるのでそれを過ぎてから左(東)へ曲がらなくてはいけません。この浅瀬にはカキの養殖のための竿がたくさん立っていると先生に教えてもらっていたのでそれに注意しながら左へ回り込みます。細かく間切りながら少しずつ正面の目指す小さな無人島(Betts Isle.)に近づきます。海図によれば島のギリギリまで十分な水深がありますが、あまり冒険は出来ません。数隻の船が既に錨を降ろして停泊しています。それも避けなくてはいけません。本当にアンカーしようか、今日は偵察までにしておこうか、ちょっと迷いながら船の間を縫うように走って島にちょっとずつ近づきます。航海士はもうアンカーするものだと思い込んでいるので、その気持ちに押されてちょっと不安ながらもアンカーを降ろして、ジブをたたんで、アンカーが効いていそうなことを確かめてメインセールも降ろしました。

やれやれうまくいったようです。ここまでハーバーからちょうど1時間くらいでした。ここは潮流が強いから気を付けるようにと先生に言われていたのですが、たぶん潮流のせいで、船から風下の方にアンカーロープがのびています。船はなぜか風上を向いています。つまり船首に結んだアンカーロープは船尾の方にのびています。どうしてこうなるのか訳が分かりませんが、船はしっかり止まっているようなので、まあいいのでしょう。

救命胴衣をつけたまま海に入って、私だけ島まで泳ぎました。ヤマネコ島よりも小さな無人島です。南側と東側の浅瀬には丈の短い草が生えていてとっても感じがいいです。このあたりで潮干狩りが出来るのでしょう。今日は3時までにハーバーに戻らないといけないのでパスです。島を一周歩きましたが2〜3分もかかりませんでした。そんなに小さな島です。今日は天気の良い夏の日曜日、他にもアザラシがたくさん島に上陸していました。(本当にこの辺りに本物のアザラシが来ることもあるそうです。)ボーイがヨットから手旗信号を送ってきました。う〜ん、速すぎて読めない。最近は腕を上げていてちょっと読むのが追いつきません。せっかくの絶好の機会に残念です。

またゆっくり来ることにして、今日は早々に出発です。メインセールを上げるのとアンカーを上げるのとどっちを先にするべきか、なんて思いながら、どっちもすぐに上げられるようにします。船が風下を向いたままだとメインセールが上げにくいから、アンカーロープを航海士にたぐってもらいます。そのうちに船の向きが変わるだろうと思っていたら、ジャラジャラと鎖の音がして、もうアンカーが全部上がってしまいました。あわててボーイにメインセールを上げてもらいます。船が風下を向いているのですぐに途中でセールがひっかかってしまいました。周りの船や陸地にはまだ近づいていません。あわてずに上げ綱をちょっとゆるめて2人がかりで船を風下に向けたままメインを上げてしまいました。もう安心です。風を受けて船が進めば舵が効いてどちらにでも行けます。

島から離れ、浅瀬を十分に巻いた所でジャイブしてC11の緑のブイを目指し、そこから今度はR12の赤いブイを真っ直ぐねらえます。水路に乗ったら右側の緑のブイを次から次へとたどりながら、ハーバーに帰りました。今日は今までで最高に楽しい航海でした。あそこまで行ければ灯台の島一周はもう一息です。実は最初の日に家族4人で一緒に乗って以来、AB船員(娘)は一人で2週間のサマーキャンプに行っているため、ずっと航海士(妻)とボーイ(息子)と3人でヨットに乗っていました。またAB船員が加わってから一緒に灯台の島一周に挑戦しようと思います。

R10の灯標

水路の両側には、ブイ(浮標)に混じって所々このように固定された灯標もあります。港に向かって水路を上っていく場合、水路の右側に赤の三角錐型のブイや三角板のついた灯標、左側に緑の円柱型のブイや四角板のついた灯標が並んでいます。
RN12のブイ

何度もお世話になったブイです。水路を上ってきて、このブイで右に曲がり、ツバメ島へ向かいます。

8月12〜15日:ヨットレースに初挑戦(番外編)

AB船員が行っていたサマーキャンプの最後に家族も加わって4泊のキャンプをしてきました。湖のほとりにあってヨットに乗り放題です。Ideal-18に比べるとずっと小さな1枚帆のセンターボード付きヨットです。1枚帆と言ってもアマゾン号とは違って3角形の帆でした。私とAB船員、ボーイが乗るともう満員です。

最初の日にチン(沈)初体験しました。ジャイブの時だったかどうだったか記憶は定かでないのですが、とにかくひっくり返ってしまい、センターボードに乗って起こしました。水が気持ち良かったです。またちょっと座礁というか、センターボードが何かにひっかかって少し持ち上がりました。最後にハーバー(という程の施設でもないけど)に戻す時は繋留してある別のヨットと衝突するし、でも小さな艇なので何が起ころうとたいしたことにはならず気楽です。

2日目はAB船員は一人で別のヨットに乗って、私とボーイが乗ったヨットと何度か競争しました。なぜかAB船員のヨットの方が速くて全然勝てませんでした。

最後の日に湖で夏の間毎週やっているヨットレースの最終戦があるというので、それに飛び入り参加しました。この日は今までで一番風が強く吹いています。かなり寒いのでチンは避けたいところです。スタートまで練習にあちこち走っている間に、突然目の前に別のヨットが現れて相手の右舷船首にかなりの勢いで衝突してしまいました。こちらもあちらもよく前を見ていなかったみたいです。でもこちらは右舷開き、相手は左舷開きだったので、あちらの方が余計に悪いのでしょうが、「どうもすみません」と言っている間に行ってしまい、お互いに自分のヨットの事で忙しくてそれきりでした。

さて、スタートの合図がどういうものなのかが分からない事に突然気が付きました。プップッという音が聞こえたのは、たぶん何分前かなのでしょう。他のヨットがスタートラインに向かうのを気にしながらいると、またプッとなって、2〜3艇が既に最初のマークに向かっているようです。もうスタートしたのかと思って、我が艇も風上のブイに向かい始めました。でもふと気が付くと、またほとんどのヨットはスタートラインのあたりにいます。あわててまたスタートラインに戻りました。スタート直前でチンしたくないので、ジャイブせずにタックしてスタートラインを目指します。スタートの合図をする船のマストにさっきまで上がっていた青い旗が降りています。記憶の片隅に旗を降ろすのがスタートの合図と何かの本に書いてあったような気がしたので、今度こそスタートだと思い、うまいスタートをきったヨットに続きました。その後やっぱり違ったかなと一瞬戻りかけましたが、結果的には単なる運で3〜4番のいいスタートを切りました。ヨットはじっと止まっていられないのでスタートは本当に難しいです。

まずは風上マークまで間切っていきます。この艇はタックの途中に惰力を失って風上を真っ直ぐ向いたまま止まってしまうことがよくあります。それに風上いっぱいに進んでいる時になかなかスピードに乗れません。(艇のせいではなくて船長の腕が悪いのですが)今日もそういう苦労をしながら何とか風上の1番マークまでたどり着いて、そこから次のマークまでは斜め後ろから快適に風を受けて行きます。でもスループ(2枚帆のヨット)に次々と抜かされてしまいます。2番目のマークを回る時にはジャイブしなくてはいけません。風が強いので緊張しますが、うまく出来ました。メインシートが途中でひっかかったりしたらまずチンです。3番目の風下マークを回ってまた間切って最初のマークに向かいます。その後、ヨットの本では2周目は2番目のマークは無視していいことになっていたような気がするのですが、他のヨットは1周目と同じコースを通っているみたいだったので、2番マークでまたジャイブして、3番マークからまた間切ってスタート兼ゴールラインに向かいました。ヨットがゴールするたびにプッという音がなります。我が艇もゴールラインを横切る時にプッという嬉しい音を聞 きました。

結果、2枚帆(スループ)8艇と1枚帆3艇の合計11艇の中で8位でした。つまり、2枚帆にも1艇だけは勝って、1枚帆の中では1番でした。大満足で〜す。

サマーキャンプでのヨット

赤と白のセールがAB船員の繰るヨット、青と緑のセールが私とボーイの繰るヨットです。写真のようにセールは三角形をしています。

8月22日(土):ツバメ島から紅海横断、土人の島へ

8/22 12:00-16:00、5号艇、天気:晴、風向:南東、風力:弱風

久しぶりにAB船員が復帰して家族4人勢揃いしてIdeal-18に乗りました。今日は風と潮の調子が良ければ灯台の島を一周するつもりで出航しました。

まずはおなじみの水路をさかのぼります。AB船員は水路の両側に並んだブイを見るのは初めてです。ボーイがちょっと得意げにあれこれと説明しています。風向きを考えてちょっと行き過ぎたR14の所から右に大きく曲がり、C11の緑のブイをねらい、浅瀬を巻いて無人島に近づきました。今日はAB船員がアンカーの係り、ボーイがジブの係りです。島に出来るだけ近づいてから風上にヨットを向けて、「ジブたため」、「アンカー降ろせ」、と号令をかけて、自分ではメインセールを降ろし、無事に錨泊しました。

ボーイはなぜかパスしたし、航海士は最初から水に入るつもりはなかったので、AB船員と私だけで島まで泳ぎました。水の温度は全然冷たくなくて快適です。潮干狩りが出来るかどうか、砂浜というか砂利浜を少し掘ってみましたが、小石が出てくるばかりで貝は見つかりませんでした。ヨットと陸の間で手旗信号でいろいろとやり取りしました。声はちょっと届きにくい距離なので、手旗がとても役に立ちます。ところどころ間違った字はありますが、ボーイも腕を上げてきているので、実用できます。AB船員が一番上手なのですが、速いので私は最初の何文字かを逃すともう追いつけません。

AB船員とまずは偵察に島の一周です。ちょうど錨泊地と反対側に来た所で、浅瀬が細長く隣の島の方に向かってのびているのに気が付きました。前回私が一人で上陸した時には見逃していました。「これは紅海横断だ!」とさっそく浅瀬の上を歩いて隣の島に向かいます。ずっと膝くらいの深さの浅瀬でエジプト人にならずにとうとう隣の島までたどり着きました。その島もとても小さな島ですが、そこには一軒の土人部落がありました。土人もちらほらと見えます。友好的でしょうか?浅瀬を渡りきったところに「侵入禁止」の立て札がありました。残念、土人の私有地のようです。すぐに最初の無人島に引き返しました。紅海横断の浅瀬があるということで、AB船員は、この無人島を「ツバメ島」と名付けました。土人の島にはまだいい名前が思い浮かびません。取りあえず「土人の島」と呼ぶことにします。さらにツバメ島の一周を続けると、土人のかまどの跡を二つと、長い金属の棒を発見しました。この棒は測量棒として使えそうです。いずれこの島の地図を作る測量をしてみても面白そうです。あるいはこの棒で食事時計を作るのもいいかもしれません。

ヨットのボーイから手旗信号です。「SAKANAGAIRU」船尾の海面を指差しています。「KOI」私たちを呼んでいます。今日は釣竿を持って来ていません。何で魚を捕れるでしょうか?さっきの金属の棒を「もり」にしてはどうでしょうか?AB船員が取りに戻ってそれを持ったままヨットに向かって泳ぎます。娘よりも泳ぎが下手な私はそれを追いかけます。潮の流れのせいで、ヨットに近づく最後の5mくらいはとても時間がかかります。ようやく魚の所まで来ましたが体長5cmくらいの小魚の群れでした。これでは直径2cmくらいの「もり」ではどうしようもありません。

ヨットに上がってまたアンカーをAB船員が上げ、ボーイがメインセールとジブを上げて、私が舵を握って出航しました。この風向きで灯台の島を一周するには、両側に見えない岩礁がある二つの島の間の一番難しい所を通り抜けるのに向かい風で間切ることになるため、今日はパスしました。その代わり、まだ時間があるので、さらに水路の奥を探検することにしました。灯台のような赤のR14から先は、水路の右側の赤いブイは無くて、左側の緑のブイだけが頼りです。この辺りは制限速度が厳しいのか、どのモーターボートも私たちのヨットと同じくらいのゆっくりの速度で進んでいるのでちょっと安心です。最後の緑のブイの近くまで来て、そこでたくさんのボートの合間を縫ってジャイブしてUターンして水路右側の緑のブイに沿って戻りました。でも水路に沿うにはちょっと風上すぎます。この狭くて往来の激しい水路を時々横断するように間切らないといけないかもしれません。往来の途切れをねらってタックして水路の右側から左側まで横断してまたタックして水路になるべく沿って進みました。この辺りは緑のブイの向こう側はすぐに浅瀬なので無理はできません。だんだんと水路は右に曲 がるので、そのうちにフリーで走れるようになり一安心です。難しい所以外はずっとAB船員が舵を握っての水路探検でした。

ハーバーに近くなってから風が落ちて、秒速50cmくらいのノロノロ状態で帰航したので、ブイをつかまえるのはとっても楽でした。2週間ぶりのIdeal-18だったので、風は弱くても最初はちょっと緊張していましたが、今日も無事にいい航海が出来ました。

ツバメ島

アンカーしたIdeal 18から眺めたツバメ島です。ヨットから泳いで島に渡ります。土人(あざらし)はいつも島のこちら側のビーチにいます。
土人の島

北側から見た土人の島です。写真の右の方へ行くと紅海横断してツバメ島につながります。

8月23日(日):未だ島一周出来ず

8/23 11:30-15:00、4号艇、天気:曇(景色が霞がかっている)、風向:東北東、風力:微風

今日こそは灯台の島を一周するぞと出航しました。風向きは昨日とあまり変わらないので、難しいところを追い風で抜けられるように逆周りで島の一周をねらうことにしました。

ところがそよ風でヨットはノロノロとしか進みません。以前座礁した浅瀬を大きく巻いて、灯台の島の裏側に初めて行きました。裏側を間切って北東に向かうのですが、何しろ風が弱くて遅いです。それに今日は景色全体がとても霞んでいて、初めて行く場所の目標の確認がとてもやりにくいです。今日は3時までにハーバーに戻らなくてはいけないので、島の裏側を半分ほど進んだところで、もう時間切れになりそうだったので、Uターンしてまたノロノロと戻りました。

でも、今日初めてしたこと2つ。帆走しながらヨットの上で昼食(マクドナルドでしたが)を食べたのと釣りです。釣りは餌にハンバーガーのかけらを使ったのでもちろん釣れませんでした。子供達も退屈して途中からは海の上に浮かんでいる海草をつかまえるのに夢中になっていました。そしたら発見したこと。海草に小さな小さなエビ(1cm以下)がよく付いています。今度からはこれを釣りの餌に出来そうです。

8月29日(土):灯台の島、とうとう一周

8/29 11:45-16:00、2号艇、天気:晴のち曇、風向:南のち南西、風力:弱風のちいい風

昨日はハリケーンの接近に備えて、全てのIdeal-18は陸に上げてあったそうで、今日の風の具合で海に戻すかどうか分からない状態だったのですが、ハーバーに行くと風は弱くて大丈夫でした。久しぶりの南風です。

今日こそ島を一周したいです。でも今日は潮の具合が悪くて、干潮11時、満潮17時、出航12時なので、まだ危険な島と島の間の水路(Middle Passage)は当分の間浅くて通れません。今日はヨットを16時までに戻さなくてはなりません。

出航したとたんに私を呼ぶ声がします。あたりを見渡すと、先生が桟橋からこっちへ戻ってこいと合図をしています。やれやれ、また何かヘマをしでかしたのでしょうか。ジャイブしてブイではなくて、桟橋に向かいます。幸い今日は南風なので、桟橋と平行に吹いているから接岸は楽です。でも接岸してもヨットにもやい綱は付いていません。(ブイから離れる時は、もやい綱をブイの方に残します。)だから桟橋につかまり続けなくてはいけません。先生が「ジブたため」「メイン???」と号令しました。いそいでボーイにジブをたたむようにいいます。メインはどうしろと言ったのか分からなかったので、ハリヤードを持って降ろす準備をして先生の顔色をうかがいます。先生は、「トッピングリフトがきつすぎるから緩める」と言っています。トッピング・リフトというのは、マストの一番上からブームの一番後ろまで伸びているロープで、メインセールを降ろした時にブームを支えているロープです。普段は触らないロープです。この機会に、Middle Passageを通過するのに安全な時間を先生に尋ねました。干潮と満潮のちょうど真ん中より満潮側なら大丈夫だろうとのことです。と言うことは、今日は14時以降なら通れます。何とかなりそうです。先生が調節した後、また思いっきりハリヤードを引いてメインセールを上げられるだけ上げて「よしいいだろう」とのことでまた出航しました。

難しいMiddle Passageを南から北へ順風で通るために、反時計周りに「灯台の島」を一周することになります。前の日曜日と同じく最初は座礁した浅瀬を巻いて灯台の島の裏側に向かいました。途中でまた帆走しながらマクドナルドの昼食です。島の裏側では風が弱くて追い風なので、身体に感じる風はほとんど無く、ヨットはノロノロ進んでいるけどまるで凪の中にいるようです。ただ暑いだけで、早く泳ぎたくなりました。

Middle Passageへの進入は、「導灯」を使います。左側の島の一番端っこと、ずっと奥に見える水路のR10の灯台を重ねた線で進入すれば、左側の島の手前の見えない岩礁と右側にいくつか隠れている岩の間を安全に通れるはずです。この灯台を使うアイデアは、実は海図を見ることに夢中になったボーイから出てきたのです。私は最初はコンパスの角度を海図で調べてコンパスを見ながら進入する予定だったのですが、これは実際はとてもむずかしくて誤差が大きいので、「導灯」のほうがよっぽど簡単で確実です。30分くらい早く着いてしまったので、ちょっとウロウロして時間をつぶし、14時になるのを待ってから進入を開始しました。本当は別のヨットが1隻でも通過するのを確かめてからだと安心なのですが、まわりにも水路の向こう側にもMiddle Passageを抜けようと思っているようなヨットは見当たりません。

まず2つの「導灯」を合わせます。ここに来て分かったのは、遠くのR10の灯台の後ろ、本土に大きな煙突があって、それもほとんど一直線に重なるので、とっても心強い「導灯」として使えました。大丈夫なはずと分かっていてもかなり緊張します。ボーイは水の中をのぞきこんで底が見えないか見張っています。右の島からは水路の真ん中あたりまで見えない岩礁が張り出しているので、出来るだけ左の島のそばを通らなくてはいけません。潮の流れがあるようで、まっすぐ煙突を目指して舵を取るとどんどん右にそれてしまうので、ちょっと左気味に進むとちょうどよく線の上をキープ出来ました。でも、だんだんと左の島に近づくと、今度はあまり近づきすぎないように、「導灯」の線からははずれますが、少しずつ右へずれて行きました。(「導灯」のひとつは島の端っこですから、いつまでも線上にいると座礁します。)2つの島の間の一番狭い所を通過したことを確かめて、今度は徐々に右へと進路を変えていき、ツバメ島へ行く時におなじみの緑のブイC11を目指します。とうとうMiddle Passageの通過に成功しました。

まだちょっと時間があるし暑くて泳ぎたいので、ツバメ島に寄って、アンカーを入れて、今日はAB船員・ボーイ・私で泳いで上陸しました。(航海士は今日は歯痛のため家で留守番です。)ボーイは初めての上陸です。また航海横断の道に行くと、驚いたことに完全に陸となって隣の島まで続いています。前回来た時は満潮に近かったので、ずっと膝くらいの深さの海の中でしたが、今日は幅3〜5mくらいの道となっています。すごい!潮の満ち干きで島の形がどんどん変わっていくのは「ひみつの海」そのものです。

島を一周したらすぐにまたヨットに戻って、出航。風が少し回ったようで、水路に出てから、水路沿いにハーバーに戻るのはほとんど真向かいの風でした。だから水路いっぱいに何度も転回して間切りながら進みます。前から後ろからモーターボートがよくやってきますが、こちらは帆船です。堂々と進んでいれば、皆避けていってくれました。もちろん、なるべく迷惑にならないようにとこちらも気遣いはしています。だんだん風が強くなってきて、結構ヒールしながら気持ち良く帰りました。

8月30日(日):アンカーがきかない!

8/30 12:30-15:00、1号艇、天気:晴、風向:南南西、風力:快風

今日は午前中の人が時間になっても戻ってこなかったりで、結局2時間半足らずしか乗れませんでしたが、風はかなりあったのでノロノロ進むことはありませんでした。

今日の目的地はツバメ島の隣のちょっと大きな島への上陸です。水路を登るのにほとんど真後ろからの風なので、うっかりジャイブしないように気を使いました。

いつものツバメ島の錨泊地に来ると、今日はたくさんのモーターボートが既に錨泊しています。いつもの場所よりももうちょっと今日の目的の島に近い方がいいので、どこにアンカーを降ろそうかなと思いつつ、取りあえず船首を風に向けてジブをたたんで一度止まったのですが、そこからだとまだ島へはちょっと距離があります。やっぱりもうちょっと島へ近づこうかと思って、また動き出そうとバタバタしている間に風と潮に流されて、錨泊しているモーターボートの船首にどんどん近づいてしまい、ブームがぶつかり、しょうがないのでその船の船首から海にのびているアンカーロープをつかんでそれで自分のヨットをエイッと動かして、アンカーロープを舵にひっかけながらも、ようやく離れまたメインセールに風をはらんで動き出しました。ビックリしたそのモーターボートの人が船室から出てきたので「すみませーん」と言って、後はもう自分のヨットのことで手いっぱいでした。やれやれです。ヨットで、「取りあえず止まる」なんてやっちゃいけないんですね。止まった途端にヨットは舵が効かなくなってコントロール出来なくなります。

もうちょっと島へ近づいてから、また風上にヨットを向けて止まって、今度は「アンカー降ろせ」とAB船員に号令して、自分はメインセールを降ろしました。他の船がかたまって錨泊している場所からはちょっと離れています。この辺りは潮の流れが強いし、風も今日はかなりあるので、ちゃんとアンカーが効くかどうか心配です。アンカーロープを手に持って少し引くと、ロープの先でアンカーがズルズルと海底を滑る感触が伝わってきます。まだ海底にアンカーの爪が食い込んでいないようです。

子供達は早く泳ぎたくてしょうがないので、ヨットからあまり離れないようにして泳がせました。私も暑いので早く海に入って新しい島へ上陸したいのですが、まだアンカーが心配です。近くの別のボートとその向こう側の島の景色をじっと見ていると、少しずつですがまだアンカーが効いていなくて流されているようです。流されていく方向には取りあえずすぐに危険なものはないのですが、これではヨットを離れるわけにはいきません。流されすぎると別のボートに近づきすぎて、出発する時にむずかしくなります。

残念ながら今日は上陸はあきらめました。私も身体を冷やすために一度だけ海にドボンと入ってすぐに上がり、子供達もヨットに戻って出発です。また今日も水路を幅いっぱいに間切りながらハーバーに戻りました。今日はブイをつかまえる時点でまだスピードがありすぎて、ブイをつかまえたものの強く引っ張られてまた落としそうになったAB船員が悲鳴をあげましたが、何とか力で持ちこたえてくれました。このヨットハーバーを紹介してくれた会社の人(私のボスのボス)が今日はたまたま来ていて、みっともない着艇をしっかり見られてしまいました。(^^;)

この前、座礁したのもこの1号艇だし、私にとってはよくハプニングのある艇みたいです。

9月5日(土):カモメ・ランド、いけにえの島、上陸

9/5 15:00-18:30、4号艇、天気:晴、風向:西北西、風力:ちょっと強めの快風

今日は珍しい西北西の風なので、水路の行き帰りとも間切らずにすみます。先週上陸しそこなった島へ再挑戦することにしました。毎週そうなのですが、一週間ぶりに乗る土曜日の方が続けて乗る日曜日よりもずっと緊張します。それに加えて今日は風が強いのでますます緊張します。

いい風でスピードが出てあっというまにツバメ島沖に達しました。強風の中でジャイブしてツバメ島に接近し、いつもアンカーを降ろす場所でアンカーを降ろしました。今日はしっかりアンカーの爪が海底に食い込んでヨットはしっかり止まっています。強い風と潮流が同じ向きなので、少し心配でしたが大丈夫そうです。

まず潮流が強くて流されるといけないので、私が最初に島に向かって泳ぎました。いつもよりも離れた場所にアンカーしたので、少し距離があります。でも潮流はほとんど感じなくてまっすぐ泳げました。島から手旗で合図して次にAB船員がやってきました。ボーイは今日は距離があるのに恐れをなしたのかパスです。

初めて上陸した島なので、まずは偵察です。海岸に立っている看板を見に行くと、「この先は野生動物保護のため立入禁止」と書いてあります。ということは看板のこちら側はOKということです。それに単なる土人の所有地だから侵入禁止というわけでなないので、入れなくても気持ちがいいです。海岸は貝殻だらけで、その上を歩いて海岸沿いに歩いていきました。狭い海峡をはさんでもう一つ別の無人島がすぐ隣にあります。その海峡にはカモメがたくさん浮かんでいます。そこで、その海峡には「カモメ海峡」と名付け、この島は野生保護区域もあるということで「カモメ・ランド」とAB船員と一緒に名付けました。

カモメ海峡を渡ってもう一つの無人島にも上陸してみることにしました。海峡の海底は泥みたいで、足が一歩一歩ずぼっ、ずぼっとはまりこみます。スプラッチャーが欲しいところです。ようやく「ひみつの海」みたいに泥がある所に出会えたわけですが、やっぱり気持ち悪いです。うっかりすると靴をなくしそう。深くなったら泳ごうと思って渡り始めたのに、結局歩いて海峡横断出来ました。

この島はツバメ島よりは大きく、カモメ・ランドよりはずっと小さい島です。歩いて一周出来そうなので、さっそく海岸の石の上をバランスを取りながら歩いて反時計周りに一周を始めました。一番奥に来たあたりで、一本の十字架が立っているのを発見しました。その下には大きく穴があいたかまどのようなものがあります。おお、これは「いけにえ」をささげる場所に違いありません。この島は「いけにえの島」と名付けられました。面白い島で、木登りをして見張りが出来る場所もあるし、その木にはブランコがかかっているし、野蛮人のお祭りをするにはこの島の方がツバメ島よりも良さそうです。この島からツバメ島へも歩いたり泳いだりして渡れそうでした。

またカモメ海峡を歩いて渡って、カモメ・ランドからヨットまで泳いで戻りました。風が強かったけど、アンカーを上げて出航するのはうまくいきました。水路までは少し間切って、水路はずっとスターボードタックのクローズホールド(風上いっぱいに進むこと)でいい風を受けて進んでいたのに、もっと大きなセールを張ったクルーザーに楽々と追い抜かれてしまいました。見ていると随分とヒールしてクルーザーは進んでいます。力強い帆走でほれぼれします。水路からハーバーへもまた風上に向かうことになりますが、一度タックしただけで今日は狙いをつけたコースに乗れて水路から最後のブイまでポートタックのクローズホールドでそのまま進入出来て、ブイをつかまえるのも速度がほとんどゼロになる時につかまえられました。気分最高!今日は今までで一番素晴らしい航海と探検が出来た一日でした。

9月7日(月):嵐との競争

9/7 12:00-14:45、5号艇、天気:曇のち嵐、風向:南のち北西、風力:弱風のち暴風

今日はLabour Dayで、アメリカは祝日です。午前中ちょっと雨が降りましたが、その後晴れたり曇ったりで、ハーバーに着いた時も時々晴れ間が出る曇で天気はまずまずです。今日は全部のIdeal-18がまだブイに繋がれていて、いつもの土・日に比べると乗る人が少ないようです。私が予約しておいた5号艇も私の後に使う人はいないようなので、今日は6時頃までゆっくりと乗れそうです。よし、まとまった時間が無いと無理な秘密群島全体を一周するコースに今日は挑戦できそうです。

出航して間切りながら灯台の島の西にあるR2Aの赤いブイを目指しますが、風が弱いし、今日はどうも潮の流れが強いのか、いっこうに目指すブイに近づきません。1時間くらい乗って振り返るとまだハーバーが近くに見えてがっくりです。でもようやくR2Aに近づき、次のR28の赤いブイに向かいました。やっぱり潮が強いようで、まっすぐ次のブイを目指すとどんどん左に流されています。左側は以前に座礁した浅瀬や暗礁があるので、右へ右へと少しゆとりをもって進みました。まだ風は弱くのろのろと進みます。R28の近くにはたくさんボートがアンカーしていて皆釣りをしているようです。R28をジャイブして回ってようやく灯台の島の裏側を進む針路に乗ったとたんに、雨がポツポツと降り始めました。AB船員は雨でも平気だといいますが、航海士は戻ろうということで、またジャイブして戻ることにしました。

ちょっと遠回りだけど、せめて海に浮かぶ大きな灯台を回ってから帰りたいとAB船員・ボーイが言い張るので、そうすることにしました。あれ、おかしいな。出航した時は南風で間切ってきたから帰りは順風のはずなのに戻るにも間切らないと帰れません。いつのまにか風が北西に変わっていました。またノロノロと灯台に近づいて、タックしてハーバーへ向かいました。

途中で海に何か得体の知れない丸い物が浮かんでいます。「あれは、何だ?」「クラゲかな」と言いながら通り過ぎてしまいましたが、気になるので航海士・AB船員・ボーイの強い希望により、Uターンして戻り、AB船員が海から拾い上げました。カブトガニの甲羅でした。これは面白い物が手に入ったと皆大喜びです。

さて、ハーバーに近づくにつれてだんだん風が強くなってきました。かなりの強風です。さいわいハーバーはまっすぐ風上なので、強風の時はいつジャイブするかとハラハラする追い風よりも間切る方が安心です。それに最後にブイをつかまえるのもそのまま風下から近づいてつかまえればいいはずです。追い風だと一度通り過ぎて必要ならジャイブしてUターンする必要があるので強風の時は大変です。風上いっぱいに向かっていると時々特に強い風がきた時にグワーとヒールするのでメインシートをゆるめて風を逃がします。まわりにたくさん繋留してあるクルーザーにぶつけないように何度も小刻みにタックして近づきます。5号艇用のブイを確認してそれに向かう最後のタックをしました。同時にボーイに「ジブたため」の号令。ところが前に進まずに風に流されてしまっています。まずい、隣のIdeal-18の4号艇にどんどん近づいています。また「ジブ開け」と号令して、風を受けて前に進めようとしましたが、駄目です。4号艇にぶつからないように手で押しているうちに、そのもやい綱が舵にひっかかってしまって離れなくなってしまいました。また「ジブ降ろせ」、そしてメインセールもあわて て降ろして風に煽られてもっとひどい事にならないようにしました。

そのうちに、ハーバーの人がモーターボートでやって来て、最初は私たちのヨットを曳航しようとしましたが、4号艇のもやい綱のせいか、離れません。ふとクラブハウスの方を見ると、大勢の人がこちらの一部始終を眺めています。これは恥ずかしい。ハーバーの人は、「ボートは大丈夫だけど、子供達が問題だからモーターボートに移って」と言われました。大急ぎで荷物を移し私も移るように言われ、桟橋に送ってもらいました。空を見るといつのまにか真っ黒な凄い雲です。風もどんどん強くなっています。ハーバーの人はまたヨットに戻り、ようやく5号艇を離して正しいブイにつないでくれました。でもセールをきちんとたたんだり、カバーをかけたりせずに戻って来ました。私たちも桟橋を早く離れるように言われ、クラブハウスに戻ると、見物に出ていた大勢の人は、私の恥ずかしい気持ちを察してか、目を合わせようとしません。やれやれです。最後に片づけずにヨットを離れたことに少し心が痛みます。

クラブハウスに入った途端に、ドバーッと凄い雨が降り出し、風もすごくてつないであるIdeal-18が大きく傾いています。雷もピカピカ、ゴロゴロ始まり、なんと、「ひょう」までバチバチバチと降り出しました。これは、帰ってくるのがちょっと遅かったら大変なことになるところでした。もし、R28のブイの所で雨が降り出さなかったら、もし航海士が帰ろうと言わなかったら、ひょっとすると灯台の島の裏側を行って、ハーバーから遠く離れた所でこの暴風雨に出会っていたかもと思うと本当に本当にゾッとしました。今日も結果的には最後の小さなノロマで済みましたが、紙一重でもっともっと大ノロマなことになっていたかもしれなかったわけで、反省点はたくさんあります。もしかしたらということが大きすぎて、最後にブイをつかまえそこねて助けてもらったことや恥ずかしい思いをしたことなんかは、それに比べると小さなことで、気落ちするというよりは、嵐の前に戻れて良かった、大事にならなくて良かった、という気持ちの方が大きかったです。また身体と心に染み入るようないい勉強をさせてもらいました。

9月12日(土):強い潮流と初めての獲物

9/12 15:30-18:30、1号艇、天気:晴時々曇、風向:西、風力:快風だったり微風だったり

今日は16時半の満潮をはさむ夕方の航海です。風はまあまあ。いつものツバメ島の錨泊地に追い風で向かいました。今日はクルーザーが1隻いるだけです。クルーザーにあまり近づかないように気を付けながら風上にヨットを回して、「ジブたため」、「アンカー降ろせ」。ところがアンカーロープが途中でもつれてしまってました。それをほどいてまたロープを繰り出して、またもつれて、またほどいて、ようやくロープをほとんど繰り出したところで、ロープを伝わってくるアンカーの効き具合の感触をさぐります。まだズルズルと海底を引きずっています。いつの間にかクルーザーの方にどんどん近づいています。ようやくアンカーが効いたようです。止まった所はクルーザーの左舷前方3mくらいの所でした。予定ではクルーザーの右舷前方に十分離れた所に止まるはずだったのですが、おたおたしている間に随分と風と潮に流されてしまったようです。しばらくじっとしてアンカーが本当に効いていること、流されていないことを確認しました。今日の反省、アンカーロープはあらかじめ、ちゃんともつれが無いように巻き直して用意しておくこと。

今日は釣りのための擬似餌を用意してきたので、さっそく航海士が釣り糸をたれます。いつもならここに停泊するとすぐに寄ってくる小魚や、それを目指してやってくるのか大きな魚がいるのですが、今日はさっぱりです。

満潮に近いので、エジプト人の紅海横断が出来るはずです。まだ四本モミはイスラエル人の紅海横断しか知らないので、今日は泳ぐ気になっています。3人で海に入り、ツバメ島に向かって泳ぎはじめると、すぐにボーイはUターンしてヨットに戻ってしまいました。「流れが強い!」と言っています。確かにそんな気がするなと思って、私もUターンしてヨットに戻るように泳ぎはじめましたが、全然近づきません。満潮を過ぎたばかりなのに、潮流がすごく強いです。島からこれでは戻ってこれるかどうか分かりません。今日は残念ながら上陸はパスです。でもせっかくなので、ヨットから3mくらい離れた所でヨットに向かってしばらく泳いでました。全然近づかないので愉快です。AB船員は泳ぎが得意なので、悠々とヨットに近づいて、上がってからまたドッボーンと飛び込んだりしてました。私も最後は力を入れて3mをノロノロとヨットに近づいて上がりました。

隣のクルーザーが先に出航したので、こちらの出航の心配の種が一つ減りました。メインセールを上げて、アンカーロープをたぐって、ジブを上げて進みだしてから、アンカーを最後まで上げると、アンカーの爪に巻貝がいくつか付いていました。釣りは駄目でしたが、一応初めての獲物を手に入れました。帰りはほとんどクローズホールドでハーバーまで戻り、最後はそよ風の中をノロノロと進み、ブイをつかまえました。

帰りの高速道路からの夕焼けがきれいでした。明日もこれなら良い天気になりそうです。まだまだ海に入っても冷たくなくて快適です。今日の夕食には獲物の貝を食べました。ほんのひとかけらの身でしたが、おいしかったです。

9月13日(日):秘密群島一周グランド・セーリング

9/13 12:00-17:15、1号艇、天気:晴、風向:南、風力:快風

今日は天気も風も最高のセーリング日和です。ヨット・ハーバーの人もみんな心なしかニコニコしているようです。予約してある1号艇に夕方からの予約を誰も入れていないので、帰りの時刻を気にせずに思う存分乗れます。今日は待ちに待った秘密群島一周に挑戦です。このコースは海図をじっと眺めていると見えてくるコースで、私とボーイが相談なしにそれぞれ考えたコースがたまたま一緒だったというものです。

出航して灯台の島の西のR2Aの赤のブイを最初に目指してAB船員が舵を取ります。この辺りの海はいつもなぜか波が細かく高く荒れているので、ヨットがバシャンバシャンと音を立てて揺れます。間切りながら次のR28の赤いブイへ進みます。この辺りにはいつもたくさんのモーターボートが錨泊して釣りをしています。ランチに骨付きチキンとおにぎりを食べながら、灯台の島の南側を西北西に進みます。今日はすっごく空気が澄んでいるようで、遠くの景色までくっきりと見えます。次の目標のはるかかなた(約3海里)の赤いブイR26がもうここから見えています。

強すぎないいい風を横から受けて快調に進み、middle passageへ進入するための導灯の線を横切り、この先は未踏査の海域です。左側に島からずっと沖まで連なる岩礁が見えています。それに平行してさらに西北西に進み、大きな赤いR26のブイに近づきました。今までに見たブイの中で最大で、しかも近づくと「ガラン、ゴロン」と音が聞こえてきました!なんと、鐘付きのブイです。とってもいい音です。ガラン、ゴロン、波に揺られて鳴っています。今までで一番遠くに来た記念に、このブイに「ビーチエンド・ブイ」とAB船員が名付けました。

ビーチエンド・ブイで大きく左に曲がり、真後ろから風を受けて前々から遠くに見えて気になっていた海に浮かぶ大きな灯台に向かいます。左側にはいつか上陸してみたいもう一つの島があります。右前方にもまだ我々の探検を待つ大きな島があります。また鐘付きの大きな緑のブイG5を過ぎて海に浮かぶ灯台を過ぎて、針路はまた大きく左に曲がり、西へ進みます。次の目標は小さな赤の灯台R8ですが、真っ直ぐ進むと海図によれば魚網があるようなので、念のため右の方から巻いて進みます。R8の次は緑のブイC9で、もうここは土人の島の裏側です。

そこから浅瀬を巻いていつもの錨泊地に進入し、ツバメ島のそばでアンカーを降ろしました。ハーバーを出て2時間半くらいの素晴らしく気持ちの良いセーリングでした。今日は潮の流れはほとんど無いようです。ボーイをなだめすかしてようやく島まで泳ぐ気になったので、3人で泳ぎました。航海士はまた釣りに挑戦です。昨日アンカーで獲った貝の残りの剥き身を今日は餌に使っています。

ツバメ島上陸組は、また紅海横断イスラエル人をして土人の島の入口まで行き、また戻ってツバメ島を一周した後、海図によるとツバメ島からカモメ・ランドに向かってのびている浅瀬があるようなので、そこを歩いてどこまで行けるかやってみることにしました。今日は時間がたっぷりあるので、出来ればまたカモメ・ランドに渡り、いけにえの島にも行ってみたいです。浅瀬はかなり遠くまでのびていて紅海横断エジプト人のようです。だんだん深くなってくると、潮流が左から右へ流れているのがかなり強く感じられます。時々流れていく海草もかなりのスピードです。この潮流に逆らっては泳げません。流されるとまずいので、あまり深くなる前に戻りました。ツバメ島からヨットに戻るのにも、この潮流に流されないように左よりをねらいましたが、泳ぎだすとこのあたりだとむしろ右から左への軽い流れがあるようで、結局ヨットをまっすぐ目指しながら泳ぎました。

まだ時間があるので一度アンカーを上げて、もう少しカモメ・ランドに接近してからまたアンカーを降ろしました。でももうボーイは泳がないと言うし、AB船員も最初は行きたがっていたけど結局身体が乾いたのにまた水に入るのも面倒なので、また出航しました。今日はいつもの浅瀬を巻くコースの代わりに、ツバメ島と浅瀬の間を抜ける近道で水路に向かいました。水路をさらにさかのぼって河口近くまで行きたかったのですが、今日は南風なので、帰りが真向かいの風となり狭くて混雑した水路を間切らなくてはならないので、ちょっと早めですがハーバーに戻ることにしました。

ハーバーに戻る途中でクルーザーを追い抜きました。クルーザーとディンギーを比べると、クルーザーの方が早いような気がするのですが、時々こちらよりも遅いクルーザーもいます。追い抜くのは気分がいいものです。ハーバーに戻り、渡し舟の人が「いいセーリングだったか?楽しんだか?」と聞かれ、皆でニコニコしながら「Yes!」と叫びました。今日は長くヨットに乗っていたせいか、家に帰って夕食の時になっても、4人ともまだ身体が揺れていました。

ビーチエンド・ブイ

ガランゴロンと音の鳴る大きなブイです。近づくと、波に揺られて音が鳴るための仕掛けがよく分かりました。
東の海中灯台

いつも遠くに見えていて気になっていた灯台です。同じように海の真ん中に立つ灯台が、西の方にももうひとつあります。

9月19日(土):のんびりのんびりのセーリング

9/19 12:00-16:00、2号艇、天気:晴、風向:西、風力:そよ風

今日は自分も含めて予約が入っているのは2艇だけ、でももう1艇は結局誰も乗りに来なかったようです。そろそろ秋なので、乗る人が少なくなる上に、今日はほとんど凪です。それでもCOOT家はめげずに艇を出します。

こんな日にこそ水路を上って河口から川を少しさかのぼって、どこかの桟橋にもやってみようかと思って出発したのですが、AB船員が、泳ぎたい、いけにえの島に行きたい、と言うので、いつもの錨泊地に向かい、カモメ・ランドに上陸出来そうな辺りでアンカーを降ろしました。今日は風向きと潮の向きが逆なので、こういう時にアンカーを降ろすと面白いことになります。アンカーロープが船首から船尾の方にのびてしまいました。潮の流れはかなりきつそうです。でも陸地は風上側にあるので、いざとなればセールを上げさえすればなんとかなりそうです。しばらく様子を見てアンカーが効いていることを確かめました。

さて、島まで泳ごうかと思ってふと見るとどうも艇がかなり流されたようです。潮の流れはツバメ島からカモメ・ランドにのびる浅瀬の方に向かっています。放っておくとこれはまずそうです。いそいで「アンカー上げろ!」、メインセールも上げて、浅瀬から離れました。どうもいつもカモメ・ランドに近い方にアンカーすると、走錨するようです。だからなかなかカモメ・ランドといけにえの島には上陸出来ません。

まだ時間はたっぷりあるので、最初の予定通りに水路の奥を目指すことにしました。風がほとんど無い上に追い風で進むので、ただ太陽に照らされて暑いだけで、艇はほとんど止まっているような感じです。水路の奥に進むに連れてだんだん真後ろからの風になってきたので、帰りのことを考えて、今日は途中まででUターンしました。またもハーバーまでのろのろのろのろと帰りました。ハーバーに一番近い島のそばを通っている時に、モーターボートの引き波が、突然ヨットのそばで大きな波となって膨れ上がりゴーッと逆波付きで近づいてきて一瞬かなりあせりましたが、たいしたことなく乗り越えました。

ハーバーで、いつもの先生にまた3個所ほど次の目標となる場所を教えてもらいました。秘密群島一周グランド・セーリングの時に近くを通った2つの島に上陸するための錨泊地と、いつもと逆のずっと西の方に行った所にある崖に囲まれた素晴らしい場所、というのが次の目的地です。

9月20日(日):サルガッソ海で船底くぐり

9/20 11:45-16:30、1号艇、天気:晴、風向:南南西、風力:快風

明け方は霧でしたが、その後晴れてセーリング日和となりました。今日の目的地はいけにえの島の東にある未踏査の島です。まずはおなじみの水路を上ります。今日は真後ろからの風ですが、それほど強い風ではないのでナチュラルジャイブの心配はありません。いつもの赤いR12のブイから右へ曲がりおなじみの緑のC11のブイでいつもは少し右寄りに針路を変えるのですが、今日はここで左に曲がり、ツバメ島・土人の島の北側を東へ向かいます。緑のC9のブイを通過して前方真っ直ぐの大きな海の中の灯台をめざします。ここまでは秘密群島一周グランド・セーリングの時の逆コースです。

灯台まで向かう途中で右へ曲がって、いけにえの島と今日の目的地の島の間の海へ進入するのですが、曲がるタイミングが大切です。早く曲がりすぎるといけにえの島から続く岩礁があるし、曲がるのが遅すぎると目的地の島から続く浅瀬があります。前もって海図で導灯になるものとして、いけにえの島から南南西にのびる岩礁の中の島の南端とその奥に見えるビーチエンド・ブイが重なる線を考えていたのですが、岩礁の中の島というのがどれなのかがよく分かりません。しかもアンカーの用意をAB船員がしたのですが、アンカーロープがからまっていてそれをほどいて巻き直ししているうちに、どうも進入するタイミングをのがしたようです。

今日は止めようかとも思いましたが、気を取り直してUターンして、海図をもう一度じっくり見ます。緑のC9のブイの手前右側の赤い灯標の近くまで戻り、その辺りからビーチエンド・ブイを目指して進入すれば大丈夫そうです。意を決して左に曲がり、進入を開始します。緊張の時間です。導灯を使う方法と違って、単にビーチエンド・ブイを目指すだけだと、潮の流れでどれだけ横に流されるのかが分からないので、こころもち最初は右の岩礁を避けるために左へ、その後は左の浅瀬を避けるために右へと舵をきります。危険地帯は抜けたようです。アンカーするのに、出来るだけ島に近い方が泳いで渡るのが楽なのでいいのですが、初めての場所なので、海底のアンカーの効き具合も分からないし、潮の流れの方向と強さも分からないし、その上、風下に浅瀬があるので、十分に余裕を持てる場所でヨットを風上に向けて止まり、アンカーを降ろします。幸いアンカーロープも十分に長く、一発ですぐに海底に食い込んだようで、しっかりと止まりました。やれやれです。乗組員皆に、どこか2つの何かが重なる目標物を探して、それを時々見て流されていないことを確認することを各自の仕事としまし た。しばらく様子を見ていると、潮の流れは緩いですが、満潮から干潮に向かうこの時間、風の向きと同じ北へ流れているようです。

もう13時を過ぎましたが、ようやくお昼の弁当をヨットの上で食べて、航海士は釣りを始めました。餌は、昨日の航海の時にアンカーを引き上げたら付いてきた貝を一晩海水で飼っておいたものです。私は双眼鏡でいけにえの島の十字架を探しましたが、こちら側にあるはずなのに分かりません。突然、航海士が大声を上げました。カニが釣れたようです。でも、最後の瞬間に針からはずれて落ちてしまいました。AB船員が網ですくおうとしましたが、結局逃げられてしまいました。そこで、目的地の島を「カニ島」と命名し、カニ島といけにえの島にはさまれたこの海を「サルガッソ海」と名付けました。

AB船員と私はサルガッソ海に入りヨットのまわりを泳ぎました。やっぱり潮の流れでじっとしていると北に流されてしまいます。カニ島まで200mくらい離れているし、潮の流れもあるし、今日はカニ島への上陸は断念です。その代わり、2人ともIdeal-18の船底くぐりに挑戦です。艇の中央にあるフィンキールとラダーの間を右舷から左舷へ船底くぐりをしました。まだまだ水も冷たくなく、水から出ても寒くもなく、泳ぐことが出来てよかったです。

帰りはほとんどずっと間切りながらハーバーに戻りました。クローズホールドの時に一番スピードが出る角度というものが、ようやく分かってきたような気がします。初めの頃はクローズホールドの時も、前方の目標を決めてそれに向けて舵を取っていましたが、風上いっぱいに向かう時は、ジブセールの両側につけられた糸の流れ具合を見て、風がセールの両側をもっとも滑らかに吹き抜けていくような針路に舵を取るようになりました。今まではどうも風上側に切りあがり過ぎていたようです。

今日はもうひとつ、島に名前を付けました。ハーバーを出てすぐの所にある島ですが、ここには素敵な家が立っていて誰かのプライベートな島のようです。だから上陸は出来ないので今まで無視していたのですが、なんと、この島の南西端には屋形船のように「大砲」があるのです。いつもハーバーから水路に向かう時、そして帰りと、この大砲が向いている所を横切ります。そこで、大砲に敬意を表してこの島を「海賊の島」と命名しました。

カニ島

サルガッソ海にアンカーしたIdeal 18から眺めたカニ島です。土人の家のようなのが1軒建っています。

9月26日(土):馬蹄湾へ

9/26 12:00-16:30、6号艇、天気:晴、風向:南西、風力:弱風〜微風

今日はいつもと逆の西へ向かい、未踏査の海域の探検に出発です。海に出ると、西の方にはおびただしい数のヨットが出ていて、レースをしているようです。レースの邪魔にならないようにと間切りながら避けようとしているつもりが、相手はスピードの出るカタマラン(双胴艇)なので、何時の間にか囲まれてしまいました。先ほどから前方に大きな島のように見えていたのは、どうも大きな軍艦のようで、こちらに向かってきています。これは引き波が凄いだろうなあと思いつつ、揺れるのも面白いのでどんどん近づいていったら、軍艦ではなくて何か工事用の船でした。ゆっくり進んでいるせいか、引き波は期待外れでした。

今までIdeal-18で来た最西端である海の中の大きな灯台からさらに西へ進みます。風が少し弱まったようで、ゆっくりと間切りながら遠くに見える陸地に少しずつ近づきます。目的地は灯台の西北西なのですが、まっすぐ向かうと途中に暗礁があるので、一度西南西に向かい、陸地に沿って北上します。だけど陸地沿いにも一個所暗礁があるので、それも避けるために、陸に近づきすぎない所から北へ針路を取ります。

だんだん目的地の湾の入口に近づいてきました。双眼鏡で入口を眺めると、岩が3つ見えます。あの岩のどの間を通ればいいのか、まだここからではよく分かりません。さらに近づくと、3つとも湾の入口の手前の半島から飛び出している岩礁の一部だと分かり、それを回り込むようにして湾へ進入を開始します。ここは両側を小さな崖に囲まれた、馬蹄型の素晴らしく素敵な入り江です。中にはクルーザーが何隻かブイに繋がれてるので、その間をぬって湾の中を2周しました。今度来る時はアンカーして岩の島まで泳いで渡ってみたいです。「馬蹄湾」と命名しました。

帰りはますます風が弱くなって、ノロノロと戻りました。そばでカタマランは少しの風でもちゃんと動いているのですが、こちらはキールボート、セールがバサリバサリと音を立ててまるで止まっているようでした。

10月3日(土):クルーザーに変身

10/3 12:00-15:15、5号艇、天気:曇、風向:北西、風力:快風〜微風(一定せず)

とうとう夏も終わり、完全に秋です。今日はセーターの上にウィンドブレーカーまで着てヨットに乗りました。もう泳げないので島への上陸が出来ないのが残念です。今日は空気が無茶苦茶澄んでいるようで、普段はほとんど見えないロング・アイランドがすぐ近くに見えます。まるでそこまでヨットですぐに行けそうな感じですが、本当はすごく距離があります。

まず水路を登り、土人の島の北側を東へ進み、サルガッソ海への入口を過ぎて、海の中の大きな灯台に近づきました。そこから北へ向かいまだ上陸していない大きな島から北西へ細長くのびる砂洲に近づきます。砂洲にはたくさんのウの鳥がいたのが、ヨットが近づいてきたので飛び立ってしまいました。暖かければアンカーして上陸するとかなり探検できそうな面白そうな島です。来年の夏までおあずけです。

その後、水路を河口までさかのぼる予定が、かなり寒いので、AB船員までもが「もう今日はいい」ということで、ハーバーに帰ることにしました。少しでも寒さを避けるために、水夫達は船首にある船倉にもぐりこんで、備え付けのマットの上にタオルを敷いたり、セールカバーを枕にしたりして、船室に変身させてしまいました。ディンギーのIdeal-18がクルーザーに変身です。「船室」の中は暖かいし、波で揺れるのもゆりかごのようで、水夫どもは船室にヌクヌクと収まって出てこようとしません。

途中でボーイと航海士が交代して、航海士まで船室にもぐりこんでしまいました。ところが、水路の一番狭い所で大きな船がすぐそばを通ったので、引き波がすごくて船首が波をかぶり、フォアステイの付け根から船室に少し浸水して、悲鳴をあげて航海士とAB船員が飛び出してきました。当直中にさぼった罰でした。

10月4日(日):水路の終点

10/4 11:30-14:40、5号艇、天気:晴、風向:東、風力:弱風

昨日寒かったのに懲りた航海士が今日はパスしたので3人で乗りました。今日の目的地は、水路をとことん上ることです。出来れば橋の手前にあるというレストランの桟橋にヨットをもやってスープを飲みたいのですが、どうでしょうか。

もうプレジャーボートに乗る人もぐっと減ったので、いつもにぎやかな水路も今日はとても静かです。たまにしかボートがやってこないので、とっても静かなセーリングが楽しめます。行きは水路を間切って上るのですが、まわりに船が少ないから楽です。

ツバメ島などに行く時には右へ曲がる目印となるR12のブイとR14の灯標を過ぎ、水路はそこから左へ曲がり、横風となったので最後の部分は間切らなくていいから安心です。以前来た時に引き返した地点を過ぎ、未踏査海域へ入りました。右にはブイにつながれたクルーザー、左はマリーナで、プレジャーボートのまさにメッカという感じです。最後は川のようになって前方に橋が見えてきました。左側にずらりと並んでいる桟橋の最後がレストランのようですが、風下側になるので、今日は接岸は止めておくことにしました。運良くボートの往来も途切れたので、橋の手前で大きく左へ曲がりジャイブしてUターンしました。

帰りは水路に沿っていくには風上過ぎるので、時々水路の右側から左側へスターボード・タックで横断するようにして間切る必要があります。水路の右側はすぐに浅瀬なので、ポートタックで水路に沿いながらもだんだん右側へ寄っていくと、あまり行き過ぎないうちに転回します。そういう時に他のボートがやってくると、こちらのヨットが突然目の前で水路を横断し始めるように見えるので、あんまり相手をビックリさせないように転回するタイミングをとります。ようやく水路が右へ曲がり、後は追い風を受けてハーバーまで帰りました。途中で後ろから追いついてきた一隻のクルーザーとレースのようにしばらく一緒に走りました。

さて、ハーバーに戻り渡し舟で桟橋に戻ると、海の中におびただしい数の魚の群れがいます。急いで釣竿を組み立てて糸を垂らしました。餌が無いにもかかわらず、水夫達は1時間ちょっとの間に2種類の魚を計5匹釣りました。いつも釣竿を持ってくるのに本当に釣れたのは初めてです。クーラーボックスに海水を汲んで、泳がせたまま家まで持ってかえり、から揚げにして夕食に食べました。

***

シーズン最後の週末は、土曜日は雨模様、日曜日は快晴にもかかわらず風が強すぎて、どちらも出航出来ませんでした。従って、水路の終点に行ったのが、今シーズン最後の航海となりました。


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